社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

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肩・肘・手

母指CM関節症

1.疾患の概要

母指CM関節症とは、親指の付け根にある母指CM関節の軟骨がすり減り、関節に炎症や変形が生じる病気です。CM関節とは「手根中手関節」のことで、母指CM関節は手首側の大菱形骨と、親指側の第1中手骨からなる関節です。
 

母指CM関節は、親指を開く、閉じる、つまむ、握るなどの動作に重要な役割を持っています。親指は日常生活の多くの動作で使われるため、母指CM関節には繰り返し負担がかかります。加齢や使いすぎ、関節のゆるさなどにより軟骨が傷むと、関節のすき間が狭くなったり、骨棘と呼ばれる骨の突出ができたり、関節が亜脱臼して変形が進むことがあります。


初期には、物をつまむ、瓶のふたを開ける、ペットボトルを開ける、鍵を回すなどの動作で親指の付け根に痛みを感じることがあります。進行すると、安静時にも痛みが出たり、親指の付け根が出っ張って見えたり、親指を大きく開きにくくなったりすることがあります。

母指CM関節症は中高年以降の女性に多くみられますが、手をよく使う仕事や家事、スポーツ、過去のけがなどが関係して発症することもあります。


症状の程度は、画像上の変形の強さと必ずしも一致しないため、痛みの程度、つまむ力や握る力、日常生活への影響、関節の状態を総合的に評価して治療方針を決めます。

実際の診断や治療内容は、症状、検査結果、年齢、活動量、仕事や生活環境、持病などを踏まえて医師が個別に判断します。

2.原因と症状

母指CM関節症の主な原因は、親指の付け根にかかる長年の負担と関節軟骨の加齢性変化です。母指CM関節は動きが大きく、つまむ動作や握る動作で強い力がかかるため、変形性関節症が起こりやすい部位の一つです。

発症や進行に関係する要因

  • 加齢
  • 女性、閉経後
  • 手をよく使う仕事や家事
  • つまむ、ひねる、握る動作の反復
  • 瓶のふた開け、鍵回し、裁縫、園芸、調理などの反復動作
  • パソコン、スマートフォン操作の負担
  • 関節のゆるさ
  • 親指や手首の過去の骨折、脱臼、靱帯損傷
  • 母指CM関節の亜脱臼
  • 関節リウマチなどの炎症性関節疾患
  • 遺伝的要因
  • 手指の変形性関節症を伴う体質

代表的な症状

主な症状は、親指の付け根の痛みです。特に、親指と人差し指で物をつまむ動作や、親指に力を入れてひねる動作で痛みが出やすくなります。

そのほか、以下の症状がみられる場合があります。

  • 手首の小指側が痛い
  • 親指の付け根が痛い
  • 物をつまむと痛い
  • 瓶のふたやペットボトルを開けると痛い
  • 鍵を回すと痛い
  • 洗濯ばさみをつまむと痛い
  • ボタンをかける、ファスナーを上げる動作がつらい
  • 包丁、はさみ、ペンなどを使うと痛い
  • スマートフォン操作で痛みが出る
  • 親指を開きにくい
  • 親指の付け根が腫れる
  • 親指の付け根が出っ張って見える
  • 親指の動きで引っかかり感や音がする
  • 握力やつまむ力が弱くなる
  • 物を落としやすい
  • 手首の親指側まで痛みが広がる
  • 進行すると親指が変形する

進行すると、母指CM関節が外側へずれる亜脱臼や、親指の付け根が内側に入り、親指の第2関節が反り返るような変形がみられることがあります。このような変形が進むと、つまむ力が入りにくくなり、細かい作業が難しくなる場合があります。

 

急に強い腫れや熱感が出た場合、発熱を伴う場合、外傷後に強い痛みがある場合、親指が動かせない場合、しびれや麻痺を伴う場合は、骨折、脱臼、感染症、痛風・偽痛風、腱鞘炎、神経障害など別の疾患が関係していることもあるため、早めの受診が必要です。

3.検査

母指CM関節症の診断では、痛みの部位、症状が出る動作、仕事や家事での手の使い方、症状の経過、過去のけがや持病などを確認したうえで、親指や手首の状態を診察します。

主な検査には以下があります。

問診・診察

親指の付け根の圧痛、腫れ、変形、可動域、つまむ力、握力、関節の不安定性などを確認します。母指CM関節に圧をかけながら動かして痛みや摩擦感をみる検査が行われることがあります。

また、ドケルバン病、ばね指、手根管症候群、関節リウマチなど、似た症状を起こす疾患との鑑別も行います。

X線検査

母指CM関節症の評価で基本となる検査です。関節のすき間の狭さ、骨棘、骨の硬化、亜脱臼、関節の変形などを確認します。症状の程度や病期を判断する参考になります。

ストレスX線検査

母指CM関節の不安定性や亜脱臼の程度を確認する目的で行われることがあります。関節に力がかかった状態でのずれを評価します。

超音波検査

関節周囲の炎症、腱鞘炎、滑膜炎、関節液の貯留などを確認することがあります。痛みの部位を直接確認しながら評価できる場合があります。

MRI検査

軟骨、靱帯、滑膜炎、骨の内部の変化、周囲の腱や軟部組織の状態を詳しく確認する検査です。症状とX線所見が一致しない場合や、ほかの疾患が疑われる場合に検討されます。

CT検査

骨の変形、骨棘、関節面の状態を詳しく確認する目的で行われることがあります。手術前の計画に用いられる場合もあります。

血液検査

関節リウマチ、痛風、感染症など、ほかの関節疾患との鑑別が必要な場合に行われます。
検査結果だけで治療方針が決まるわけではありません。痛みの程度、日常生活や仕事への支障、関節の不安定性、保存療法の効果などを含めて総合的に判断します。

4.治療

母指CM関節症の治療は、痛みの軽減、親指の機能維持、つまみ動作や握り動作の改善、変形進行の予防を目的に行います。基本的には保存療法から開始し、痛みや変形が進行して日常生活への支障が大きい場合に手術療法を検討します。

主な治療には以下があります。

生活指導、手の使い方の工夫

痛みを強くする動作を見直し、母指CM関節への負担を減らします。瓶のふた開け、強くつまむ動作、親指で強く押す動作、長時間のスマートフォン操作などは症状に応じて調整します。

道具を使ってふたを開ける、太めのペンやグリップを使う、荷物を小分けにする、親指だけでなく手全体で持つなどの工夫が有効な場合があります。

装具療法

母指CM関節を安定させ、痛みを軽減する目的で、母指用サポーターやCM関節装具を使用します。親指の付け根を支えることで、つまむ動作や家事動作が行いやすくなる場合があります。

痛みが強い時期には、手首を含めて固定する装具が検討されることもあります。

薬物療法

痛みに応じて、外用薬、内服薬、湿布などが使用されます。非ステロイド性抗炎症薬などは痛みや炎症を抑える目的で使われますが、胃腸障害、腎機能障害、心血管系への影響などに注意が必要な場合があります。持病や併用薬を踏まえて選択します。

物理療法

温熱療法、寒冷療法、電気治療などが症状に応じて行われることがあります。痛みや腫れが強い時期には冷却が有効な場合があり、慢性的なこわばりがある場合には温めることで動かしやすくなる場合があります。

運動療法、作業療法

親指や手首の動きを保ち、手指の使い方を整えることが重要です。医師や作業療法士の指導のもとで、痛みを悪化させない範囲で可動域訓練、筋力訓練、関節保護の指導、日常生活動作の工夫などを行います。

無理に強く握る、強くつまむ訓練を行うと症状が悪化することがあるため、状態に合わせて進めます。

関節内注射

痛みや炎症が強い場合には、母指CM関節内へのステロイド注射などが検討されることがあります。注射により痛みが軽減し、装具療法やリハビリテーションを進めやすくなる場合があります。

効果の持続には個人差があり、繰り返しの注射では腱や軟部組織への影響に注意が必要です。注射の適応や回数、間隔は医師が個別に判断します。

手術療法

保存療法で十分な改善が得られず、痛みや変形により日常生活や仕事への支障が大きい場合には、手術療法が検討されます。

代表的な手術には、大菱形骨切除術、靱帯再建術、腱移行術、関節形成術、関節固定術、骨切り術、人工関節置換術などがあります。

 

大菱形骨切除術や関節形成術では、傷んだ関節部分を処置し、痛みの軽減と親指の機能改善を目指します。

関節固定術は、母指CM関節を固定して痛みを軽減する手術で、強い力を必要とする仕事をする方などで検討されることがあります。関節の動きは制限されますが、安定性が得られる場合があります。

人工関節置換術は、傷んだ関節を人工関節に置き換える方法ですが、骨の状態、活動量、年齢などを踏まえて慎重に適応を判断します。

 

手術の種類は、年齢、活動量、痛みの程度、変形の程度、仕事や趣味で必要な手の使い方、周囲関節の状態、持病などを考慮して選択されます。

治療にはそれぞれ利点と注意点があります。手術を行った場合も、感染、出血、神経障害、しびれ、痛みの残存、握力やつまみ力の低下、関節の不安定性、骨癒合不全、再発、再手術の可能性などのリスクがあり、術後のリハビリテーションと定期的な経過観察が重要です。

5.合併症

母指CM関節症が進行すると、親指の痛みだけでなく、手全体の使い方や日常生活にも影響することがあります。

主な合併症・関連する問題には以下があります。

  • 慢性的な親指の痛み
    関節の炎症や変形が進むと、親指の付け根の痛みが長く続くことがあります。つまむ動作や握る動作で痛みが出やすくなります。
  • つまみ力、握力の低下
    親指は物をつまむ動作に重要なため、母指CM関節症が進行すると、つまむ力や握る力が低下することがあります。瓶のふた開け、鍵回し、筆記、調理などが難しくなる場合があります。
  • 親指の変形
    母指CM関節の亜脱臼や変形が進むと、親指の付け根が出っ張り、親指を開きにくくなることがあります。進行すると親指全体のバランスが崩れ、見た目の変形や動作障害につながることがあります。
  • 母指MP関節の過伸展
    母指CM関節の変形を補うように、親指の第2関節であるMP関節が反り返ることがあります。これにより、さらに物をつまみにくくなる場合があります。
  • 日常生活動作の制限
    着替え、調理、洗濯、掃除、スマートフォン操作、筆記、裁縫、園芸、買い物袋を持つ動作などに支障が出ることがあります。
  • 仕事や趣味への支障
    手をよく使う仕事、介護、調理、事務作業、楽器演奏、手芸、スポーツなどに影響することがあります。
  • 手首やほかの指への負担
    親指の痛みをかばうことで、手首、他の指、前腕に余分な負担がかかり、腱鞘炎や手関節痛につながることがあります。
  • 関節のこわばり、可動域制限
    痛みを避けて親指を使わない状態が続くと、親指の動きが硬くなり、さらに使いにくくなることがあります。
  • ほかの疾患の見落とし
    母指CM関節症と思われる症状の中に、ドケルバン病、ばね指、手根管症候群、関節リウマチ、舟状骨周囲の障害、痛風・偽痛風などが隠れている場合があります。症状が強い場合や長引く場合、しびれや腫れを伴う場合は再評価が重要です。
また、注射治療では、注射部位の痛み、感染、出血、皮膚や皮下脂肪の萎縮、色素変化、腱や軟部組織への影響などに注意が必要です。手術療法を行う場合には、感染、出血、神経・血管損傷、しびれ、創部治癒不良、痛みの残存、握力やつまみ力の低下、骨癒合不全、固定材料の違和感、再発、再手術の可能性などがあります。リスクは患者さんの状態や治療内容によって異なるため、治療前に十分な説明を受けることが重要です。

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※注釈
この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。