社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

電話 TEL 病気のこと 病気のこと メニュー

社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

肩・肘・手

胸郭出口症候群

1.疾患の概要

胸郭出口症候群とは、首から腕へ向かう神経や血管が、鎖骨周囲の狭い通り道で圧迫されたり引き伸ばされたりすることで、首、肩、腕、手の痛み、しびれ、だるさ、冷感、脱力感などが生じる病気です。


胸郭出口とは、首の付け根から鎖骨、第一肋骨、小胸筋周囲にかけての領域を指します。この部位には、腕神経叢という神経の束や、鎖骨下動脈・鎖骨下静脈などの血管が通っています。姿勢、筋肉の緊張、骨の形、外傷、反復動作などにより通り道が狭くなると、神経や血管が圧迫されて症状が出ます。


胸郭出口症候群には、主に神経が障害される神経性胸郭出口症候群、静脈が圧迫される静脈性胸郭出口症候群、動脈が圧迫される動脈性胸郭出口症候群があります。多くは神経性で、腕や手のしびれ、痛み、だるさ、力の入りにくさなどが中心となります。血管性の場合は、腕の腫れ、色の変化、冷感、血栓などが問題になることがあります。

症状は、腕を上げる、重い物を持つ、肩を後ろに引く、長時間同じ姿勢をとるなどの動作で悪化することがあります。なで肩、猫背、長時間のデスクワーク、頭上で腕を使う仕事やスポーツなどが関係する場合もあります。


胸郭出口症候群の症状は、頚椎疾患、肩関節疾患、肘部管症候群、手根管症候群などと似ることがあるため、症状の部位、誘発される姿勢、神経や血管の状態を総合的に評価して診断します。

実際の診断や治療内容は、症状、検査結果、年齢、活動量、仕事やスポーツの内容、持病などを踏まえて医師が個別に判断します。

2.原因と症状

胸郭出口症候群は、首から腕へ向かう神経や血管が、斜角筋の間、鎖骨と第一肋骨の間、小胸筋の下などで圧迫されることにより起こります。圧迫だけでなく、腕を上げた時や肩が下がった時に神経や血管が引き伸ばされることも症状に関係します。

発症や進行に関係する要因

  • 猫背、巻き肩などの姿勢不良
  • 長時間のデスクワーク、スマートフォン操作
  • 腕を上げた姿勢での作業
  • 重い荷物を持つ習慣
  • リュックやショルダーバッグによる肩への圧迫
  • 野球、バレーボール、水泳、投てき競技など腕をよく使うスポーツ
  • 筋力低下、肩甲骨周囲の機能低下
  • 首や肩周囲の筋緊張
  • 交通事故、むち打ち、鎖骨骨折などの外傷
  • 頚肋、第一肋骨の形態異常
  • 鎖骨や肋骨の骨折後変形
  • 小胸筋や斜角筋の過緊張
  • 妊娠、体重変化、筋肉量の変化
  • 先天的な骨や筋肉の形の違い

代表的な症状

主な症状は、首、肩、腕、手にかけての痛みやしびれです。特に、腕を上げて作業する時や、重い物を持つ時、長時間同じ姿勢を続けた時に症状が出やすくなります。

そのほか、以下の症状がみられる場合があります。

  • 首から肩、腕にかけての痛み
  • 腕や手のしびれ
  • 手の小指側、薬指側のしびれ
  • 腕がだるい、重い
  • 腕を上げているとつらい
  • 洗濯物を干す、つり革につかまる動作で症状が出る
  • ドライヤーを使う、髪を洗う動作で腕がだるくなる
  • 重い荷物を持つと症状が悪化する
  • 肩こり、首こりが強い
  • 手に力が入りにくい
  • 細かい作業がしにくい
  • 握力が落ちたように感じる
  • 手が冷える、色が悪くなる
  • 腕や手が腫れる
  • 腕の血管が浮き出る
  • 腕を動かすとしびれや痛みが変化する
  • 頭痛や肩甲骨周囲の痛みを伴うことがある

神経性胸郭出口症候群では、しびれ、痛み、だるさ、脱力感が中心です。症状は腕全体に出ることもありますが、小指側に目立つ場合があります。

 

静脈性胸郭出口症候群では、腕の腫れ、重だるさ、青紫色の変化、血管の怒張などがみられることがあります。鎖骨下静脈に血栓ができる場合もあります。

 

動脈性胸郭出口症候群では、手指の冷感、蒼白、痛み、脈が弱くなる、手指の色が変わるなどがみられることがあります。血流障害が強い場合は早急な対応が必要です。

 

急に腕が大きく腫れた場合、手指が冷たく白色や紫色になる場合、強い痛みや脱力が急に出た場合、脈が触れにくい場合、息苦しさや胸痛を伴う場合は、血栓症、血流障害、肺塞栓症、心臓や血管の病気などが関係していることもあるため、早めの受診が必要です。

3.検査

胸郭出口症候群の診断では、症状の部位、しびれや痛みが出る姿勢、仕事やスポーツの内容、外傷歴、持病などを確認したうえで、首、肩、腕、手の状態を診察します。

主な検査には以下があります。

問診・診察

痛みやしびれの範囲、症状が悪化する姿勢、肩や首の動き、姿勢、肩甲骨の位置、筋力、感覚、脈の変化などを確認します。腕を上げた姿勢や首を動かした姿勢で症状が誘発されるかをみる検査を行うことがあります。

代表的な誘発テストには、アドソンテスト、ライトテスト、肋鎖テスト、ルーステストなどがあります。ただし、これらのテストだけで診断が確定するわけではなく、症状やほかの検査と合わせて判断します。

X線検査

頚肋、第一肋骨や鎖骨の形、骨折後変形、頚椎の変形などを確認します。胸郭出口症候群そのものがX線で直接分かるわけではありませんが、神経や血管を圧迫しやすい骨の異常を調べるために有用です。

MRI検査

頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症、腫瘤、筋肉や軟部組織の異常などを確認する目的で行われることがあります。神経性胸郭出口症候群と似た症状を起こす頚椎疾患との鑑別にも役立ちます。

CT検査、CT血管造影検査

骨の形、頚肋、第一肋骨、鎖骨周囲の構造、血管の圧迫や狭窄を詳しく確認する目的で行われることがあります。血管性胸郭出口症候群が疑われる場合や手術前の評価に用いられることがあります。

超音波検査

鎖骨下動脈や鎖骨下静脈の血流、血管の圧迫、血栓の有無などを確認できます。腕の位置を変えながら血流の変化を評価することもあります。

血管造影検査、静脈造影検査

血管性胸郭出口症候群が疑われる場合に、血管の狭窄、閉塞、血栓、動脈瘤などを詳しく確認する目的で行われることがあります。

神経伝導検査、筋電図検査

神経障害の程度や部位を調べる検査です。胸郭出口症候群では明らかな異常が出ないこともありますが、頚椎疾患、肘部管症候群、手根管症候群、末梢神経障害などとの鑑別に役立ちます。

血液検査

炎症性疾患、糖尿病、甲状腺疾患、血栓傾向など、ほかの疾患との鑑別や全身状態の確認が必要な場合に行われることがあります。

胸郭出口症候群と似た症状を起こす病気には、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、肩関節周囲炎、腱板断裂、肘部管症候群、手根管症候群、胸郭出口以外の血管疾患などがあります。検査結果だけでなく、症状の出方や診察所見を含めて総合的に判断します。

4.治療

胸郭出口症候群の治療は、神経や血管への圧迫や牽引を減らし、痛みやしびれを軽減し、姿勢や肩甲骨の動きを改善し、日常生活や仕事、スポーツへの復帰を目指して行います。多くの神経性胸郭出口症候群では、保存療法から開始します。

主な治療には以下があります。

生活指導、姿勢の見直し

症状を悪化させる姿勢や動作を見直します。長時間のうつむき姿勢、猫背、腕を上げたままの作業、重い荷物を肩にかけることなどは症状に応じて調整します。

デスクワークでは、椅子や机の高さ、モニターの位置、キーボードやマウスの位置を見直し、首や肩に負担がかかりにくい環境を整えます。作業の合間に休憩を入れ、首や肩を同じ姿勢で固めないことも大切です。

運動療法、リハビリテーション

胸郭出口症候群では、姿勢、肩甲骨の動き、首や肩周囲の筋肉のバランスを整えることが重要です。医師や理学療法士の指導のもとで、胸郭や肩甲骨周囲のストレッチ、斜角筋や小胸筋の緊張緩和、肩甲骨を支える筋肉の強化、体幹機能の改善などを行います。

無理なストレッチや強いマッサージで症状が悪化することもあるため、症状に合わせて段階的に進めます。

薬物療法

痛みやしびれに応じて、外用薬、内服薬などが使用されることがあります。非ステロイド性抗炎症薬などは痛みを抑える目的で使われますが、胃腸障害、腎機能障害、持病、併用薬などに注意が必要です。神経痛が強い場合には、神経障害性疼痛に対する薬剤が検討されることもあります。

物理療法

温熱療法、電気治療、超音波治療などが症状に応じて行われることがあります。筋緊張の軽減や痛みの緩和を目的に、リハビリテーションと組み合わせて行われる場合があります。

装具、サポートの工夫

肩を強く引き下げる重いバッグを避ける、リュックの重さを調整する、作業中の腕の位置を支えるなど、神経や血管への負担を減らす工夫を行います。姿勢矯正用具などを使用する場合もありますが、過度な固定は筋力低下につながることがあるため注意が必要です。

注射治療、ブロック治療

痛みが強い場合や、斜角筋や小胸筋の緊張が症状に関係していると考えられる場合に、局所麻酔薬などを用いたブロック注射が検討されることがあります。診断の補助や一時的な症状緩和を目的に行われる場合があります。

注射の適応や方法は、症状、原因、全身状態を踏まえて慎重に判断します。

血管性胸郭出口症候群への治療

静脈性胸郭出口症候群で血栓がある場合には、抗凝固療法、血栓溶解療法、カテーテル治療などが検討されることがあります。動脈性胸郭出口症候群で血流障害、動脈瘤、血栓、塞栓がある場合には、血管外科的治療が必要になることがあります。

血管性の場合は、神経性よりも緊急性が高いことがあるため、早めの専門的評価が重要です。

手術療法

保存療法を続けても症状が改善しない場合、神経障害が進行している場合、血管の圧迫や血栓、動脈瘤などがある場合には、手術療法が検討されます。

代表的な手術には、第一肋骨切除術、前斜角筋切離術、頚肋切除術、小胸筋腱切離術、血管修復術などがあります。血管性の場合には、血栓や動脈病変に対する処置を組み合わせることがあります。

 

手術の種類は、圧迫されている部位、神経性か血管性か、骨や筋肉の形、症状の程度、年齢、活動量、仕事やスポーツの内容などを考慮して選択されます。

治療にはそれぞれ利点と注意点があります。手術を行った場合も、感染、出血、神経障害、血管損傷、気胸、リンパ漏、痛みやしびれの残存、再発などのリスクがあり、術後のリハビリテーションと定期的な経過観察が重要です。

5.合併症

胸郭出口症候群が長引くと、神経や血管の障害により、腕や手の機能、日常生活、仕事やスポーツ活動に影響することがあります。

主な合併症・関連する問題には以下があります。

  • 慢性的な痛み、しびれ
    首、肩、腕、手の痛みやしびれが長期間続くことがあります。症状が慢性化すると、姿勢や筋緊張がさらに悪化し、治療に時間がかかる場合があります。
  • 筋力低下、巧緻運動障害
    神経障害が進むと、手に力が入りにくい、握力が落ちる、細かい作業がしにくいなどの症状が出ることがあります。進行すると手の筋肉がやせる場合もあります。
  • 仕事や日常生活への支障
    デスクワーク、家事、運転、荷物を持つ動作、頭上作業、スポーツなどで症状が悪化し、活動が制限されることがあります。
  • 仕事や日常生活への支障
    デスクワーク、家事、運転、荷物を持つ動作、頭上作業、スポーツなどで症状が悪化し、活動が制限されることがあります。
  • 睡眠障害
    夜間のしびれや痛み、腕のだるさにより睡眠の質が低下することがあります。疲労感や日中の集中力低下につながる場合があります。
  • 静脈血栓症
    静脈性胸郭出口症候群では、鎖骨下静脈が圧迫されて血栓ができることがあります。腕の腫れ、重だるさ、青紫色の変化などがみられる場合があります。血栓が肺へ飛ぶと肺塞栓症を起こす可能性があります。
  • 動脈血流障害
    動脈性胸郭出口症候群では、鎖骨下動脈の狭窄、動脈瘤、血栓、末梢への塞栓が起こることがあります。手指の冷感、蒼白、痛み、しびれ、皮膚色の変化がみられ、重症では血流障害が問題になります。
  • 肩、首、背中の二次的な痛み
    症状をかばうことで、首、肩、肩甲骨周囲、背中に負担がかかり、筋緊張や痛みが強くなることがあります。
  • 再発、症状の再燃
    姿勢や作業環境、スポーツフォーム、筋力バランスが改善しない場合、症状が再発することがあります。再発予防には、姿勢改善、肩甲骨周囲の筋力維持、負担の調整が重要です。
  • ほかの疾患の見落とし
    胸郭出口症候群と思われる症状の中に、頚椎疾患、肩関節疾患、肘部管症候群、手根管症候群、末梢神経障害、血管疾患などが隠れている場合があります。症状が改善しにくい場合や急に悪化する場合は再評価が重要です。
また、手術療法を行う場合には、感染、出血、神経・血管損傷、気胸、血胸、リンパ漏、創部治癒不良、痛みやしびれの残存、肩や首のこわばり、再発、再手術の可能性などがあります。リスクは患者さんの状態や病型、手術方法によって異なるため、治療前に十分な説明を受けることが重要です。

診療に関するご予約・お問い合わせはこちらから

受診に関するご予約・お問い合わせは担当窓口までご連絡ください。
092-608-0001

(代表電話)

受付時間/8:00〜17:00 ※日祝日除く
担当窓口/整形外科 外来窓口

※注釈
この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。