社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

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乳腺外科

薬物療法

5つのサブタイプ

乳がんの治療方針の決定のためには、腫瘍の病理組織検査(顕微鏡でがんの組織を詳しく調べること)が必要です。それは、乳がんは患者さんによりそれぞれが異なった性格を持っていることが明らかになったからです。

近年、遺伝子検査により乳がんを大きく5つのタイプに分ける考え方が示されました。しかし、日常診療では遺伝子検査は困難です。そこで、ホルモン感受性(エストロゲン、プロゲステロン受容体)、HER2(ハーツー)、そして組織学的グレード分類(悪性度)を病理学的 に調べることで、5つのサブタイプを区別できることがわかりました。このサブタイプの特徴に合わせて治療方針を立てていきます。

1
Luminal A
ルミナルA
ホルモン受容体陽性でHER2陰性、かつ悪性度が低い場合。
ホルモン感受性が強く、化学療法(抗がん剤)は不要。
2
Luminal B
ルミナルB
ホルモン受容体陽性でHER2陰性であるが、悪性度が高い場合。
ホルモン療法に効果があるが不十分な場合があり、化学療法が必要。
3
Luminal HER2
ルミナルHER2(ハーツ―)
ホルモン受容体、HER2ともに陽性の場合。
ホルモン療法に加え、化学療法+分子標的療法が必要。
4
HER2
HER2(ハーツ―)
ホルモン受容体陰性で、HER2陽性の場合。
化学療法+分子標的療法が必要。
5
Triple Negative
トリプルネガティブ
ホルモン受容体陰性、HER2陰性の場合。
化学療法が有効。

多遺伝子アッセイ(オンコタイプDX)とは?

乳がん手術の後、可能な限り再発を減らすため、多くの方が薬物療法を受けています。その使用する薬剤の選択は上記のような薬物療法5つのサブタイプにより決定されます。つまり個々の患者さんのがんの状況に応じて治療の方針は変わってきます。
 

5つのサブタイプのうち、ルミナルAはホルモン療法単独、ルミナルBはホルモン療法+抗がん剤がおすすめの治療方法です。ところが、ルミナルAとルミナルBは病理学的検査(腫瘍を顕微鏡で調べる検査のこと)では区別が難しい時があります。つまり、ホルモン療法単独で治療した方がよいのか、ホルモン療法+抗がん剤で治療した方が良いのか、判断が難しいことがあるのです。ホルモン療法は比較的副作用が少ない治療方法ですが、抗がん剤治療はホルモン療法と比べるといろいろな副作用の心配があります。できれば抗がん剤は避けたいと考える患者さんが多いようです。
 

その時に有効なのがオンコタイプDX(OncotypeDX)という検査方法です(Oncotype IQ)。 手術で切除した腫瘍の一部を使って検査しますので患者さんのからだに新たに負担がかかることはありません。その腫瘍組織から21個の遺伝子を検査してがんの性質を調べます。その検査の結果から化学療法を行なった方がよいのかどうか判断の助けになるというわけです。検査の結果は再発スコアとして点数化されます。この再発スコアが低値の場合は再発率が低く、化学療法の上乗せ効果が見られませんのでホルモン療法単独で十分な治療効果が期待できます。
 

2018年7月、オンコタイプDXに関する新しいデータが発表されました(TAILORx試験)。リンパ節転移がないルミナルタイプの患者さんにオンコタイプDX検査を行って、再発スコアが25点以下であれば、ホルモン療法に抗がん剤を追加しても、ホルモン療法単独と治療成績が変わらないことが示されました。病理学的検査で抗がん剤を追加するかどうか判断に迷う場合、オンコタイプDXはとても有効な検査であると言えるでしょう。
 

オンコタイプDXは初発乳がんの患者さんに行なわれる検査です。そのうち対象となるのは5つのサブタイプのうち、ルミナル A、または、ルミナル Bタイプ(ホルモン受容体陽性、HER2陰性)で、リンパ節転移陰性もしくはリンパ節転移1~3個の浸潤性乳がんの患者さんです。その他のサブタイプの判定には使用できません。また、再発患者さんにも適用されません。現在のところ、オンコタイプDXは保険収載されていない検査です。自費診療になりますので、担当医にご相談ください。