社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

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脳腫瘍

1.疾患の概要

脳腫瘍とは、頭蓋内にできる腫瘍の総称です。脳そのものから発生する腫瘍だけでなく、脳を包む髄膜、脳神経、下垂体などから発生する腫瘍も含まれます。また、肺がんや乳がんなど他の臓器のがんが脳へ転移して起こる「転移性脳腫瘍」もあります。

脳腫瘍には、比較的ゆっくり大きくなる良性腫瘍と、周囲の脳組織へ広がりやすい悪性腫瘍があります。ただし、良性であっても頭蓋骨の中という限られた空間で大きくなるため、脳や神経を圧迫し、頭痛、けいれん、麻痺、言語障害、視力障害などを起こすことがあります。

代表的な脳腫瘍には、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腫瘍、聴神経腫瘍、悪性リンパ腫、転移性脳腫瘍などがあります。治療方針は、腫瘍の種類、場所、大きさ、悪性度、症状、年齢、全身状態などによって異なります。

実際の診断や治療方針は、検査結果と患者さんの状態を踏まえて医師が個別に判断します。

2.原因と症状

脳腫瘍の多くは、明確な原因が特定できないことがあります。一部では、遺伝的な要因、過去の放射線治療、特定の遺伝性疾患などが関係する場合があります。また、転移性脳腫瘍では、肺がん、乳がん、大腸がん、腎がん、悪性黒色腫など、他の臓器のがんが血流に乗って脳に転移することで起こります。
症状は、腫瘍ができた場所、大きさ、増大の速さ、周囲の脳への影響によって異なります。

代表的な症状

  • 頭痛
  • 吐き気、嘔吐
  • けいれん発作
  • 手足の麻痺やしびれ
  • 言葉が出にくい、話が理解しにくい
  • 視力低下、視野が欠ける、物が二重に見える
  • ふらつき、歩きにくさ
  • 聴力低下、耳鳴り
  • 顔面のしびれや痛み
  • 物忘れ、性格変化、判断力低下
  • 意識がぼんやりする
  • ホルモン異常による月経異常、乳汁分泌、体重変化、手足や顔つきの変化など

脳腫瘍による頭痛は、朝方に強い、徐々に悪化する、吐き気を伴うなどの特徴がみられることがあります。ただし、頭痛の原因は多岐にわたるため、症状だけで脳腫瘍と判断することはできません。
急に強い頭痛が出た場合、けいれん、意識障害、急な麻痺や言語障害がある場合は、脳出血や脳梗塞など他の緊急疾患の可能性もあるため、速やかな受診が必要です。

3.検査

脳腫瘍が疑われる場合は、神経症状の確認と画像検査を中心に、腫瘍の位置、大きさ、性質、周囲への影響を評価します。必要に応じて、病理検査や全身検索を行います。
主な検査には以下があります。

問診・神経診察

頭痛、けいれん、麻痺、視覚・聴覚の異常、言語障害、認知機能の変化などを確認します。症状から腫瘍の部位を推定する手がかりになります。

頭部MRI検査

脳腫瘍の診断で中心となる検査です。腫瘍の場所、大きさ、周囲の脳との関係、浮腫の有無などを詳しく評価します。造影剤を使用することで、腫瘍の性質をより詳しく調べることがあります。

頭部CT検査

出血、石灰化、骨への影響、水頭症の有無などを確認します。緊急時やMRIが難しい場合にも行われます。

MRA・脳血管造影検査

腫瘍と血管の関係を確認する目的で行われることがあります。血流が豊富な腫瘍や手術前の評価に用いられる場合があります。

PET検査、脳血流検査、MRI特殊撮像など

腫瘍の活動性、悪性度、再発と治療後変化の鑑別などを評価するために行われることがあります。

血液検査

全身状態、肝腎機能、血液凝固、感染症、腫瘍マーカー、ホルモン値などを確認します。下垂体腫瘍では内分泌機能の評価が重要です。

眼科検査・聴力検査

視野障害、視力低下、眼球運動障害、聴力低下などがある場合に行われます。

病理検査・遺伝子検査

手術や生検で採取した腫瘍組織を調べ、腫瘍の種類や悪性度を診断します。近年は、治療方針の検討に分子病理学的検査が用いられることがあります。

全身検索

転移性脳腫瘍が疑われる場合は、胸腹部CT、PET検査、内視鏡検査などで原発巣や他臓器転移の有無を調べることがあります。

4.治療

脳腫瘍の治療は、腫瘍の種類、場所、大きさ、悪性度、症状、年齢、全身状態、生活への影響などを総合的に判断して決定します。主な治療法には、経過観察、手術、放射線治療、薬物療法があります。

経過観察

小さく、症状がなく、増大がゆっくりと考えられる腫瘍では、定期的なMRI検査で経過を確認することがあります。腫瘍が大きくなる、症状が出る、周囲への影響が強くなる場合には治療を検討します。

手術療法

腫瘍の摘出、脳への圧迫の軽減、病理診断を目的として行われます。腫瘍の場所によっては、神経機能を保つことを重視しながら、摘出範囲を慎重に判断します。必要に応じて、ナビゲーションシステム、神経モニタリング、覚醒下手術などが用いられることがあります。

定位的生検術

腫瘍が深部にある場合や、摘出手術の負担が大きい場合に、診断目的で一部の組織を採取する方法です。病理診断に基づいて、放射線治療や薬物療法を検討します。

放射線治療

手術後に残った腫瘍、悪性腫瘍、転移性脳腫瘍、手術が難しい部位の腫瘍などに対して行われます。通常照射のほか、定位放射線治療、強度変調放射線治療などが選択される場合があります。

薬物療法

腫瘍の種類に応じて、抗がん薬、分子標的薬、免疫療法薬などが検討されます。神経膠腫、悪性リンパ腫、転移性脳腫瘍などでは、病理診断や全身状態に応じて治療を組み合わせます。

症状を和らげる治療

脳のむくみを抑える薬、けいれんを予防する薬、痛みや吐き気への治療、ホルモン補充療法などを行うことがあります。

リハビリテーション

麻痺、言語障害、嚥下障害、高次脳機能障害、歩行障害などがある場合、機能回復や生活動作の改善を目的に行います。

脳腫瘍の治療は一つの診療科だけで完結しないことが多く、脳神経外科、放射線治療科、腫瘍内科、リハビリテーション科などが連携して方針を検討します。

5.合併症

脳腫瘍では、腫瘍そのものによる合併症と、治療に伴う合併症があります。合併症の内容は、腫瘍の種類や部位、治療方法によって異なります。
主な合併症には以下があります。

  • 頭蓋内圧亢進
    腫瘍や脳のむくみにより頭蓋内の圧が上がり、頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害などを起こすことがあります。
  • 水頭症
    脳脊髄液の流れが妨げられ、脳室に髄液がたまる状態です。歩行障害、認知機能低下、尿失禁、意識障害などがみられることがあります。
  • けいれん発作
    腫瘍が脳を刺激することで発作が起こることがあります。初発症状としてけいれんがみられる場合もあります。
  • 神経機能障害
    麻痺、しびれ、言語障害、視野障害、聴力障害、ふらつき、記憶障害、判断力低下などが起こることがあります。
  • 内分泌障害
    下垂体や視床下部周辺の腫瘍では、ホルモン分泌異常、月経異常、性機能低下、成長障害、尿崩症などが起こることがあります。
  • 再発・増大
    治療後も腫瘍が再び大きくなる場合があります。定期的な画像検査による経過観察が重要です。
  • 治療に関連する合併症
    手術では、出血、感染、髄液漏、脳浮腫、けいれん、麻痺や言語障害などの神経症状が起こる可能性があります。放射線治療では、脳浮腫、脱毛、皮膚症状、放射線壊死、認知機能への影響などが問題になることがあります。薬物療法では、吐き気、倦怠感、骨髄抑制、感染リスク、肝腎機能障害などに注意が必要です。

合併症の起こりやすさは、病状や治療内容によって異なります。治療前には、期待される効果だけでなく、起こり得るリスクや治療後の生活について説明を受けることが大切です。

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※注釈
この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。