もやもや病
1.疾患の概要
もやもや病とは、脳に血液を送る太い血管である内頚動脈の終末部を中心に、血管が徐々に細くなったり詰まったりする病気です。血流不足を補うために、脳の深部に細い血管が網の目のように発達します。この血管が画像上「もやもや」と見えることから、もやもや病と呼ばれています。
脳の血流が不足すると、一時的な手足の麻痺や言葉の出にくさなどの症状が起こります。また、細い側副血管に負担がかかることで、脳出血を起こすこともあります。
小児では脳の血流不足による一過性脳虚血発作や脳梗塞として発症することが多く、成人では脳梗塞に加えて脳出血で見つかることもあります。病気の進行には個人差があり、症状が軽い場合でも、将来的な脳梗塞や脳出血のリスクを評価することが重要です。
もやもや病は国の指定難病の一つであり、条件を満たす場合は医療費助成制度の対象となることがあります。実際の診断、治療方針、制度利用の可否は、医師の診断や行政手続きに基づいて判断されます。
2.原因と症状
もやもや病の明確な原因は、まだ完全には解明されていません。遺伝的な要因が関係すると考えられており、家族内で発症することもあります。また、甲状腺疾患、自己免疫疾患、ダウン症、神経線維腫症、頭部への放射線治療後などに、もやもや病に似た血管変化がみられることがあります。
主な症状は、脳の血流不足または出血によって起こります。
血流不足による代表的な症状
- 片側の手足に力が入らない
- 手足や顔がしびれる
- ろれつが回らない
- 言葉が出にくい
- 片目または視野の一部が見えにくい
- ふらつき、歩きにくさ
- けいれん発作
- 頭痛
- 学習面や集中力の低下
小児では、泣く、笛を吹く、熱い麺類を冷ますために息を吹きかける、激しい運動をするなど、過呼吸になりやすい状況で症状が出ることがあります。症状が数分から数十分で改善する場合でも、一過性脳虚血発作の可能性があります。
出血による代表的な症状
- 突然の強い頭痛
- 吐き気、嘔吐
- 意識障害
- 片側の麻痺
- 言語障害
- けいれん
突然の麻痺、言葉の異常、強い頭痛、意識障害がある場合は、脳梗塞や脳出血の可能性があるため、速やかな救急受診が必要です。
3.検査
もやもや病の検査では、脳血管の狭窄や閉塞の有無、もやもや血管の発達、脳血流の状態、脳梗塞や脳出血の有無を確認します。
主な検査には以下があります。
頭部MRI・MRA検査
脳梗塞、脳出血、脳萎縮の有無や、脳血管の狭窄・閉塞を確認します。もやもや病の診断や経過観察でよく用いられる検査です。
頭部CT・CT血管撮影検査:CTA
急性の脳出血が疑われる場合や、血管の形態を評価する場合に行われます。
脳血管造影検査
カテーテルを用いて脳血管を詳しく調べる検査です。血管の狭窄、側副血行路、もやもや血管の状態を詳細に評価できます。手術方針を検討する際に重要です。
脳血流検査
SPECT、PET、CT灌流画像、MRI灌流画像などにより、脳にどの程度血液が届いているかを評価します。脳血流予備能を確認するために、薬剤負荷を併用することがあります。
脳波検査
小児やけいれん発作がある場合に行われることがあります。過呼吸による脳波変化を確認する場合もあります。
血液検査
甲状腺疾患、自己免疫疾患、血液が固まりやすくなる病気など、関連疾患や類似疾患の有無を調べる目的で行われます。
神経心理検査・発達評価
記憶、注意、学習、言語、認知機能などへの影響を評価するために行われることがあります。小児では学校生活への影響を確認するうえでも重要です。
術前検査
手術を検討する場合は、血液検査、心電図、胸部X線検査などにより全身状態を確認します。
検査は、症状の有無、年齢、発症形式、治療を検討するかどうかによって選択されます。
4.治療
もやもや病の治療は、脳梗塞や脳出血を予防し、脳への血流を安定させることを目的に行います。治療方針は、症状、脳血流の低下の程度、血管の状態、年齢、出血歴、全身状態などを総合的に判断して決定します。
症状がなく、脳血流の低下が軽度と判断される場合は、定期的なMRI・MRA検査や脳血流検査で経過をみることがあります。ただし、病状が変化する場合もあるため、継続的な評価が必要です。
主な治療には以下があります。
内科的治療
脱水を避ける、発熱や下痢などで水分が不足しないようにする、過度な過呼吸を避けるなど、脳血流を悪化させる要因を減らします。 脳梗塞予防を目的に抗血小板薬が検討されることがありますが、出血リスクも踏まえて慎重に判断されます。薬物療法だけで狭くなった血管を元に戻すことは困難です。
急性期治療
脳梗塞や脳出血で発症した場合は、血圧、呼吸、循環、頭蓋内圧、けいれんなどを管理します。脳出血では、出血量や部位によって外科的処置が検討されることがあります。
血行再建術
脳への血流を補うための手術です。症状がある場合や脳血流予備能が低下している場合に検討されます。 代表的な方法には、頭皮の血管を脳の血管につなぐ直接バイパス術、頭皮や筋肉などの血管を脳表に接触させて新しい血管の発達を促す間接バイパス術、これらを組み合わせる複合バイパス術があります。
小児に対する治療
小児では、脳血流不足による症状が出やすいため、血行再建術が検討されることがあります。間接バイパス術や複合バイパス術が選択されることがあります。
成人に対する治療
成人では、脳梗塞型、出血型、無症候型など発症形式により治療方針が異なります。出血型では再出血予防を目的として、血行再建術が検討される場合があります。
リハビリテーション
麻痺、言語障害、認知機能低下、歩行障害などがある場合、理学療法、作業療法、言語聴覚療法を組み合わせて行います。
治療には利点とリスクがあり、すべての患者さんに同じ治療が適しているわけではありません。脳神経外科や脳卒中診療の専門的な評価を受け、治療しない場合のリスクと治療に伴うリスクを比較して方針を決めることが重要です。
5.合併症
もやもや病では、脳の血流不足や血管への負担により、さまざまな合併症が起こることがあります。
主な合併症には以下があります。
- 一過性脳虚血発作
一時的に脳血流が不足し、麻痺、しびれ、言語障害などが短時間出現します。症状が改善しても、脳梗塞の前兆となる場合があります。 - 脳梗塞
脳への血流不足が続くことで、脳組織が障害を受けます。麻痺、言語障害、視野障害、認知機能低下などの後遺症が残ることがあります。 - 脳出血・脳室内出血・くも膜下出血
もやもや血管や側副血行路に負担がかかり、血管が破れて出血することがあります。成人では出血で発症することがあります。 - けいれん発作
脳梗塞や血流不足、出血後の変化により、けいれんを起こすことがあります。 - 頭痛
慢性的な頭痛や、血流変化に関連した頭痛がみられることがあります。 - 認知機能・学習面への影響
脳血流不足が続くと、注意力、記憶、学習、処理速度などに影響する場合があります。小児では学校生活への配慮が必要になることがあります。 - 再発・進行
症状が落ち着いていても、血管狭窄が進行したり、反対側に病変が出たりすることがあります。定期的な経過観察が重要です。
治療に関連する合併症として、血行再建術後の脳梗塞、脳出血、過灌流症候群、けいれん、感染、創部合併症、バイパス血管の閉塞、麻酔に伴う合併症などがあります。リスクは、病状、年齢、手術方法、全身状態によって異なります。
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この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。
