社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

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脳動静脈奇形

1.疾患の概要

脳動静脈奇形とは、脳の動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接つながっている血管の異常です。通常、動脈から流れてきた血液は毛細血管を通って静脈へ戻りますが、脳動静脈奇形では「ナイダス」と呼ばれる異常血管のかたまりを介して、動脈血が高い圧のまま静脈へ流れ込みます。

この異常な血流により、血管に負担がかかり、脳出血やくも膜下出血を起こすことがあります。また、周囲の脳組織への血流変化や血管の圧迫により、けいれん発作、頭痛、麻痺、言語障害などが生じる場合があります。

脳動静脈奇形は、無症状のまま脳ドックや頭部画像検査で偶然見つかることもあります。一方で、初発症状が脳出血であることもあります。治療が必要かどうかは、出血の有無、奇形の大きさ、場所、血管の構造、年齢、症状、全身状態などを総合的に評価して判断します。

実際の診断や治療方針は、検査結果と患者さんの状態を踏まえて医師が個別に判断します。

2.原因と症状

脳動静脈奇形の多くは、生まれつきの血管形成異常と考えられています。胎児期に脳の血管が作られる過程で、動脈と静脈のつながりに異常が生じることで発生するとされています。多くの場合、明確な原因は分かっていません。
一部では、遺伝性出血性毛細血管拡張症など、血管異常を起こしやすい体質や疾患に関連することがあります。ただし、すべての脳動静脈奇形が遺伝するわけではありません。

代表的な症状

未破裂脳動脈瘤の多くは無症状です。ただし、動脈瘤が大きくなり、周囲の神経や脳を圧迫すると、以下のような症状が出ることがあります。

  • 突然の強い頭痛
  • 吐き気、嘔吐
  • 意識障害
  • けいれん発作
  • 手足の麻痺やしびれ
  • ろれつが回らない
  • 言葉が出にくい、理解しにくい
  • 視野が欠ける、物が二重に見える
  • ふらつき、歩きにくさ
  • 慢性的な頭痛
  • 学習・認知機能の変化

脳動静脈奇形が破れて出血した場合は、脳出血やくも膜下出血として発症します。突然の激しい頭痛、麻痺、けいれん、意識障害などがある場合は、緊急対応が必要です。
また、けいれん発作をきっかけに発見されることもあります。初めてのけいれん、繰り返す発作、意識が戻りにくい発作がある場合は、脳の血管病変を含めた評価が必要です。

3.検査

脳動静脈奇形が疑われる場合は、異常血管の有無、出血の有無、血管の構造、周囲の脳への影響を確認します。治療方針を決めるためには、画像検査による詳細な評価が重要です。
主な検査には以下があります。

頭部CT検査

脳出血やくも膜下出血の有無を短時間で確認する検査です。急な頭痛、麻痺、意識障害などがある場合に行われることがあります。

頭部MRI検査

脳動静脈奇形の位置、大きさ、周囲の脳組織への影響、過去の出血の跡などを確認します。脳腫瘍や海綿状血管奇形など、似た病変との鑑別にも用いられます。

MRA検査

MRIを用いて脳血管を評価する検査です。異常血管の存在や血流の状態を確認する目的で行われます。

CT血管撮影検査:CTA

造影剤を使用して脳血管を詳しく撮影します。動脈、ナイダス、静脈の位置関係を把握するために用いられます。

脳血管造影検査

カテーテルを用いて脳の血管を詳細に調べる検査です。脳動静脈奇形の流入動脈、ナイダス、流出静脈、合併する動脈瘤の有無などを詳しく評価できます。治療方針を検討するうえで重要な検査です。

脳波検査

けいれん発作がある場合、発作の評価や治療方針の参考として行われることがあります。

血液検査・心電図・胸部X線検査など

手術や血管内治療を検討する際に、全身状態、出血傾向、腎機能、感染症、心肺機能などを確認します。

検査は、すべての患者さんに同じ内容で行うものではありません。症状、出血の有無、治療を検討するかどうかによって必要な検査が選択されます。

4.治療

脳動静脈奇形の治療方針は、出血の有無、病変の大きさ、場所、血管構造、症状、年齢、全身状態、治療に伴うリスクを踏まえて検討します。無症状で見つかった場合でも、将来の出血リスクと治療リスクを比較しながら方針を決めます。
主な治療には以下があります。

経過観察

病変が深部や重要な脳機能に近い場所にある場合、治療による神経障害のリスクが高い場合、無症状で出血歴がない場合などでは、定期的な画像検査で経過を確認することがあります。血圧管理や発作予防なども重要です。

開頭摘出術

頭蓋骨を一部開け、顕微鏡を用いて脳動静脈奇形を摘出する手術です。病変を完全に取り除くことで、出血リスクを下げることを目的とします。比較的表面に近く、摘出による神経機能への影響が少ないと判断される場合に検討されます。

血管内治療:塞栓術

足の付け根や手首などの血管からカテーテルを挿入し、異常血管へ塞栓物質を注入して血流を減らす治療です。単独で行う場合もありますが、手術前に出血量を減らす目的や、放射線治療と組み合わせて行われることもあります。

定位放射線治療

ガンマナイフなどを用いて、脳動静脈奇形に放射線を集中して照射する治療です。照射後、時間をかけて異常血管が閉塞していくことを目指します。効果が得られるまでに年単位の時間がかかることがあり、その間は出血リスクが残ります。

複合治療

病変の大きさや血管構造によっては、塞栓術、開頭摘出術、定位放射線治療を組み合わせて治療することがあります。

急性期治療

出血で発症した場合は、血圧管理、頭蓋内圧管理、けいれんへの対応、脳室ドレナージ、血腫除去術などが必要になることがあります。状態が安定した後に、脳動静脈奇形そのものへの治療を検討します。

治療法ごとに利点と注意点があります。すべての脳動静脈奇形に同じ治療が適しているわけではないため、脳神経外科や脳血管内治療の専門的な評価を受け、治療の目的、期待される効果、合併症のリスクについて説明を受けることが重要です。

5.合併症

脳動静脈奇形で最も注意が必要な合併症は、血管の破裂による頭蓋内出血です。出血の場所や量によっては、命に関わる場合や後遺症を残す場合があります。
主な合併症には以下があります。

  • 脳出血・くも膜下出血
    異常血管が破れることで出血を起こします。突然の頭痛、嘔吐、麻痺、意識障害、けいれんなどを伴うことがあります。
  • 再出血
    一度出血した脳動静脈奇形では、再び出血する可能性があります。再出血を防ぐために、病変の状態に応じた治療方針を検討します。
  • けいれん発作
    脳動静脈奇形が周囲の脳を刺激することで、てんかん発作を起こすことがあります。抗てんかん薬による管理が必要になる場合があります。
  • 脳浮腫・頭蓋内圧亢進
    出血や治療後の反応により脳が腫れ、意識障害や神経症状を悪化させることがあります。
  • 水頭症
    出血によって脳脊髄液の流れが妨げられ、脳室に髄液がたまることがあります。脳室ドレナージやシャント手術が必要になる場合があります。
  • 神経機能障害
    麻痺、感覚障害、言語障害、視野障害、記憶障害、高次脳機能障害などが残ることがあります。
  • 治療に関連する合併症
    開頭手術では、出血、感染、脳梗塞、神経障害、けいれん、髄液漏などが起こる可能性があります。血管内治療では、血管損傷、脳梗塞、出血、塞栓物質の意図しない流入、造影剤による腎機能障害やアレルギーなどが問題になることがあります。定位放射線治療では、脳浮腫、放射線壊死、神経症状、治療効果が出るまでの期間中の出血などに注意が必要です。

合併症のリスクは、病変の大きさ、場所、血管構造、出血歴、治療方法、年齢、全身状態によって異なります。治療前には、治療しない場合のリスクと治療に伴うリスクの両方を確認することが大切です。

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※注釈
この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。