変形性股関節症
1.疾患の概要
変形性股関節症とは、股関節の軟骨がすり減り、関節に炎症や変形が生じる病気です。股関節は、骨盤側のくぼみである臼蓋と、大腿骨の先端である大腿骨頭からなる関節です。軟骨は骨同士の摩擦を減らし、滑らかな動きを助ける役割を持っていますが、加齢や股関節への負担、骨の形の問題などにより徐々に傷むことがあります。
軟骨がすり減ると、関節のすき間が狭くなったり、骨棘と呼ばれる骨の突出ができたり、骨の変形が進んだりします。進行すると、股関節の痛みや動きにくさが強くなり、歩行や階段昇降、靴下を履く動作、爪を切る動作などの日常生活動作に支障が出ることがあります。
変形性股関節症は中高年以降に多くみられますが、日本では臼蓋形成不全など股関節の形の問題を背景に、比較的若い時期から発症することもあります。女性に多い傾向があります。
症状の程度は、画像上の変形の強さと必ずしも一致しないため、痛みの程度、歩行能力、日常生活への影響、関節の状態を総合的に評価して治療方針を決めます。
実際の診断や治療内容は、症状、検査結果、年齢、活動量、持病などを踏まえて医師が個別に判断します。
2.原因と症状
変形性股関節症の主な原因は、股関節への長年の負担と関節軟骨の加齢性変化です。明らかな原因がなく加齢とともに起こるものを一次性変形性股関節症、股関節の形の異常やけが、病気などをきっかけに起こるものを二次性変形性股関節症と呼びます。
発症や進行に関係する要因
- 加齢
- 女性
- 肥満、体重増加
- 臼蓋形成不全
- 先天性股関節脱臼、発育性股関節形成不全の既往
- 大腿骨頭すべり症、ペルテス病など小児期の股関節疾患の既往
- 大腿骨頭壊死症
- 股関節の骨折や脱臼などの外傷
- 股関節への過度な負担がかかる仕事やスポーツ
- 筋力低下
- 関節リウマチなどの炎症性関節疾患
- 遺伝的要因
代表的な症状
主な症状は、股関節の痛みです。痛みは股関節の前側、特に足の付け根に出ることが多いですが、お尻、太もも、膝の周囲に痛みを感じることもあります。そのため、最初は膝や腰の病気と感じる場合もあります。
初期には、歩き始め、長時間歩いた後、階段昇降、立ち上がり動作などで痛みを感じ、休むと軽くなることがあります。進行すると、歩行中の痛みが強くなり、安静時や夜間にも痛みが出ることがあります。
そのほか、以下の症状がみられる場合があります。
- 股関節のこわばり
- 足の付け根の痛み
- お尻や太もも、膝に響く痛み
- 股関節を曲げ伸ばししにくい
- 靴下を履く、足の爪を切る動作が難しい
- あぐらをかきにくい
- 車の乗り降りがしにくい
- 階段昇降がつらい
- 長く歩けない
- 歩くと体が左右に揺れる、跛行がある
- 左右の脚の長さが違うように感じる
- 股関節を動かすと音がする
- 腰や膝に負担がかかり、痛みが出る
急に強い痛みが出た場合、体重をかけられない場合、発熱を伴う場合、外傷後に歩けない場合は、大腿骨近位部骨折、感染性関節炎、大腿骨頭壊死症、急速破壊型股関節症など別の疾患が関係していることもあるため、早めの受診が必要です。
3.検査
変形性股関節症の診断では、症状の経過、痛みの部位、日常生活への影響、過去のけがや股関節疾患の既往、持病などを確認したうえで、股関節の状態を診察します。
主な検査には以下があります。
問診・診察
痛みが出る動作、歩行状態、股関節の可動域、脚の長さ、筋力、圧痛の部位、跛行の有無などを確認します。股関節を曲げる、開く、内側にひねるなどの動きで痛みや動きの制限があるかを評価します。
X線検査
変形性股関節症の評価で基本となる検査です。関節のすき間の狭さ、骨棘、骨の硬化、骨嚢胞、大腿骨頭や臼蓋の変形などを確認します。立った状態で撮影することで、体重がかかった時の股関節の状態を評価できます。
MRI検査
軟骨、骨の内部、関節唇、周囲の軟部組織などを詳しく確認する検査です。大腿骨頭壊死症、骨折、急速に進行する股関節症、関節唇損傷などが疑われる場合や、症状とX線所見が一致しない場合に検討されます。
CT検査
骨の形や変形の程度を詳しく確認する目的で行われることがあります。臼蓋形成不全や骨棘の位置、骨の立体的な形を評価する場合や、手術前の計画に用いられることがあります。
血液検査
関節リウマチ、感染症、痛風など、ほかの関節疾患との鑑別が必要な場合に行われます。
関節液検査
股関節に炎症や感染が疑われる場合、関節液を採取して炎症の程度や感染の有無などを調べることがあります。
検査結果だけで治療方針が決まるわけではありません。痛みの程度、歩行能力、生活上の困りごと、保存療法の効果などを含めて総合的に判断します。
4.治療
変形性股関節症の治療は、痛みの軽減、関節機能の維持、日常生活動作の改善、進行予防を目的に行います。基本的には保存療法から開始し、症状や変形が進行して日常生活への支障が大きい場合に手術療法を検討します。
主な治療には以下があります。
生活指導・体重管理
運動療法・リハビリテーション
補助具の使用
薬物療法
関節内注射
手術療法
保存療法で十分な改善が得られず、痛みや変形により日常生活への支障が大きい場合に検討されます。
代表的な手術には、骨の向きや位置を調整して股関節にかかる荷重を変える骨切り術、傷んだ股関節を人工関節に置き換える人工股関節全置換術などがあります。
比較的若く、関節軟骨がある程度保たれている場合には、股関節を温存する骨切り術が検討されることがあります。変形が進行し、関節の痛みや機能障害が強い場合には、人工股関節置換術が検討されます。
手術の種類は、年齢、活動量、変形の程度、痛みの部位、骨の形、骨質、持病などを考慮して選択されます。
治療にはそれぞれ利点と注意点があります。手術を行った場合も、感染、脱臼、血栓症、人工関節のゆるみ、人工関節周囲骨折、脚の長さの差、神経障害、痛みの残存などのリスクがあり、術後のリハビリテーションと定期的な経過観察が重要です。
5.合併症
変形性股関節症が進行すると、股関節だけでなく日常生活や全身の健康にも影響することがあります。
主な合併症・関連する問題には以下があります。
- 歩行能力の低下
痛みや可動域制限により歩く距離が短くなり、外出、買い物、通勤、階段昇降などが難しくなることがあります。 - 筋力低下・関節拘縮
痛みを避けて動かさない状態が続くと、股関節周囲や太ももの筋力が低下し、股関節の動きがさらに悪くなることがあります。 - 跛行、姿勢の変化
股関節の痛みや筋力低下により、体を傾けて歩く、左右に揺れる、脚を引きずるなどの歩き方になることがあります。 - 脚の長さの差
股関節の変形が進むと、左右の脚の長さに差が出たように感じることがあります。これにより骨盤の傾きや腰痛につながる場合があります。 - 腰、膝、反対側の股関節への負担
痛みをかばう歩き方が続くと、腰、膝、反対側の股関節に負担がかかり、別の部位の痛みにつながることがあります。 - 転倒リスクの増加
股関節の可動域制限、筋力低下、跛行により、つまずきや転倒のリスクが高くなることがあります。 - 活動量低下による全身への影響
運動量が減ることで、体重増加、生活習慣病の悪化、フレイルやサルコペニアの進行につながる場合があります。 - 股関節変形の進行
関節のすき間の狭小化や骨の変形が進むと、保存療法だけでは症状の管理が難しくなることがあります。
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この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。
