社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

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加齢黄斑変性症

1.疾患の概要

加齢黄斑変性症とは、網膜の中心部にある「黄斑」に加齢に伴う変化が起こり、物を見る中心部分が見えにくくなる病気です。黄斑は、文字を読む、人の顔を見分ける、運転するなど、細かいものを見るために重要な部位です。
 

加齢黄斑変性症には、大きく分けて「萎縮型」と「滲出型」があります。萎縮型は黄斑の細胞が徐々に傷んでいくタイプで、比較的ゆっくり進行することがあります。滲出型は、網膜の下に異常な血管ができ、その血管から血液や水分が漏れることで、視力低下やゆがみが進行しやすいタイプです。


初期には自覚症状が乏しい場合もありますが、進行すると、視野の中心がゆがむ、暗く見える、文字が読みにくいなどの症状が現れます。早期に発見し、病型や進行度に応じた治療や経過観察を行うことが重要です。


実際の診断や治療方針は、眼の状態、検査結果、年齢、全身疾患、生活状況などを踏まえて医師が判断します。

2.原因と症状

加齢黄斑変性症の主な原因は、加齢に伴う黄斑部の変化です。網膜の下に老廃物がたまる、網膜色素上皮の働きが低下する、異常な血管が発生するなどの変化が関係します

発症や進行に関係する主な要因

  • 加齢
  • 喫煙
  • 家族歴
  • 高血圧、脂質異常症などの生活習慣病
  • 肥満
  • 紫外線や強い光への長期的な曝露
  • 栄養バランスの偏り
  • 酸化ストレス
  • 遺伝的要因

特に喫煙は、加齢黄斑変性症の発症や進行に関係する重要な要因とされています。禁煙は、進行予防の観点からも重要です。

代表的な症状

  • 物がゆがんで見える
  • 視野の中心が暗く見える
  • 視野の中心が欠ける
  • 文字が読みにくい
  • 人の顔が分かりにくい
  • 片目で見ると線が曲がって見える
  • 色が分かりにくい
  • 視力が低下する

加齢黄斑変性症では、周辺の視野は比較的保たれることが多い一方で、中心部分の見え方が障害されます。そのため、歩行はできても、読書や細かい作業、人の顔の識別が難しくなることがあります。
 

片目だけに症状がある場合、両目で見ていると気づきにくいことがあります。片目ずつ見え方を確認し、急にゆがみや中心の見えにくさが出た場合は、早めに眼科を受診することが重要です。

3.検査

加齢黄斑変性症の診断では、黄斑部の状態、異常血管の有無、出血やむくみの程度、視力への影響を確認します。病型により治療方針が異なるため、複数の検査を組み合わせて評価します。

主な検査には以下があります。

視力検査

視力低下の程度を確認します。治療前後の経過をみるうえでも重要です。

眼底検査

瞳孔を広げる目薬を使用し、網膜や黄斑部を観察します。出血、滲出、網膜のむくみ、萎縮、ドルーゼンと呼ばれる沈着物などを確認します。

アムスラーチャート検査

格子状の表を片目ずつ見て、線のゆがみや中心の見えにくさを確認します。自宅での見え方の変化を確認する方法として用いられることもあります。

光干渉断層計:OCT

網膜の断面を詳しく撮影する検査です。黄斑部のむくみ、網膜下液、網膜色素上皮の変化、萎縮などを評価できます。治療効果や再発の確認にも重要です。

OCTアンギオグラフィ

造影剤を使用せずに、網膜や脈絡膜の血流を評価する検査です。異常血管の有無を確認する目的で行われることがあります。

蛍光眼底造影検査

造影剤を注射し、網膜や脈絡膜の血管からの漏れや異常血管の状態を確認します。フルオレセイン蛍光眼底造影やインドシアニングリーン蛍光眼底造影が行われることがあります。

眼底写真・自発蛍光検査

黄斑部の変化を記録し、経過観察に役立てます。萎縮型の評価にも用いられます。

眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査

白内障、緑内障、角膜疾患など、見えにくさに関係する他の眼疾患の有無を確認します。
加齢黄斑変性症と似た症状を起こす病気には、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、黄斑円孔、黄斑前膜、中心性漿液性脈絡網膜症、近視性脈絡膜新生血管などがあります。正確な診断のためには、眼底や黄斑部の詳しい評価が必要です。

4.治療

加齢黄斑変性症の治療は、病型や進行度によって異なります。治療の目的は、視力低下の進行を抑えること、出血やむくみを改善すること、残っている視機能をできるだけ保つことです。すでに障害された視機能が必ず回復するとは限らないため、早期発見と継続的な管理が重要です。

主な治療には以下があります。

抗VEGF療法

滲出型加齢黄斑変性症に対する代表的な治療です。異常血管の成長や血液・水分の漏れに関係するVEGFという物質の働きを抑える薬を、眼の中に注射します。
治療は1回で終了するとは限らず、病状に応じて繰り返し行われることがあります。注射の間隔や回数は、OCT検査や視力、出血・滲出の状態を確認しながら調整します。

光線力学療法:PDT

光に反応する薬剤を点滴し、病変部にレーザーを照射して異常血管を閉塞させる治療です。病変のタイプによって検討されることがあり、抗VEGF療法と組み合わせる場合もあります。

レーザー光凝固術

異常血管が黄斑の中心から離れている場合など、限られた条件で検討されることがあります。照射部位に瘢痕が残る可能性があるため、適応は慎重に判断されます。

硝子体手術などの外科的治療

大きな出血や合併する網膜疾患がある場合など、状況に応じて手術が検討されることがあります。適応は眼の状態によって異なります。

萎縮型への対応

萎縮型では、現時点で濁りや出血を取り除くような標準的治療がすべての方に行えるわけではありません。定期的な眼科検査で進行を確認し、滲出型への移行がないかをみていきます。

生活習慣の改善・栄養管理

禁煙、血圧や脂質の管理、バランスのよい食事、適度な運動などが重要です。必要に応じて、抗酸化ビタミンや亜鉛などを含むサプリメントが検討されることがあります。ただし、サプリメントは治療薬ではなく、すべての方に適しているわけではありません。喫煙歴や持病、内服薬を踏まえて医師に相談することが大切です。

ロービジョンケア

視力低下が残る場合には、拡大鏡、遮光眼鏡、読書補助具、照明環境の調整などを用いて、日常生活を支援します。

治療を受けていても再発や進行がみられる場合があります。見え方の変化に気づいた場合は、次回予約を待たずに医療機関へ相談することが重要です。

5.合併症

加齢黄斑変性症では、黄斑部の障害により中心視力が低下し、日常生活に影響することがあります。特に滲出型では、出血やむくみが進むと、比較的短期間で見え方が悪化することがあります。

主な合併症・関連する問題には以下があります。

  • 視野欠損の進行
    視野の一部が欠け、見落としが増えることがあります。進行すると中心視野に影響する場合があります。
  • 中心視力の低下
    文字を読む、人の顔を見る、細かい作業をすることが難しくなる場合があります。
  • 黄斑部の出血
    異常血管から出血し、急に視力が低下したり、中心が暗く見えたりすることがあります。
  • 網膜下液・網膜浮腫
    異常血管から水分が漏れ、網膜がむくむことで、ゆがみや視力低下が生じます。
  • 瘢痕化
    出血や滲出が続くと、黄斑部に瘢痕が形成され、視力低下が残ることがあります。
  • 萎縮の進行
    網膜色素上皮や視細胞の萎縮が進むと、中心部の見えにくさが進行することがあります。
  • 反対眼への発症
    片眼に加齢黄斑変性症がある場合、もう片方の眼にも発症する可能性があります。片眼ずつ見え方を確認し、定期的に検査を受けることが重要です。
  • 生活機能への影響
    読書、運転、調理、金銭管理、服薬確認などが難しくなることがあります。転倒や事故のリスクにも注意が必要です。

治療に関連する合併症として、眼内注射では感染性眼内炎、眼内炎症、眼圧上昇、硝子体出血、網膜裂孔・網膜剥離、白内障、注射部位の出血などが起こる可能性があります。造影検査では、造影剤による吐き気、アレルギー反応などがみられることがあります。
 

合併症のリスクは、眼の状態、病型、治療内容、全身状態によって異なります。治療前には、期待される効果だけでなく、起こり得るリスクについても確認することが大切です。

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※注釈
この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。