慢性閉塞性肺疾患(COPD)
1.疾患の概要
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、以前「肺気腫」や「慢性気管支炎」と呼ばれていた病態を含む、慢性かつ進行性の肺疾患です。たばこの煙などの有害物質を長期間吸い込むことで、気管支に炎症が起こり、空気の通り道が狭くなります。また、肺胞が破壊されることで酸素を取り込みにくくなり、息切れや咳、痰などの症状が出現します。
COPDは中高年以降に多くみられ、喫煙習慣と関係が深いことから「肺の生活習慣病」と表現されることもあります。国内では40歳以上の約8.6%、約530万人がCOPDに該当すると推定されていますが、多くは未診断・未治療の状態と考えられています。
一度壊れた肺胞を元に戻すことは困難ですが、禁煙、薬物療法、呼吸リハビリテーション、酸素療法などを組み合わせることで、症状の軽減、運動能力の維持、急性増悪の予防、生活の質の維持を目指します。
2.原因と症状
COPDの主な原因は喫煙です。本人の喫煙だけでなく、受動喫煙も発症に関係します。そのほか、大気汚染、職業上の粉じんや化学物質への曝露、乳幼児期の呼吸器感染、遺伝的要因などが関係することがあります。たばこの煙などにより気管支の炎症や肺胞の破壊が進むと、空気を十分に吐き出しにくくなり、呼吸機能が低下します。
代表的な症状
- 歩行時や階段昇降時の息切れ
- 労作時の呼吸困難
- 慢性的な咳
- 慢性的な痰
- ゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴
- 発作的な息苦しさ
- 進行した場合の安静時の呼吸困難
- 食欲低下、体重減少、筋力低下
- 倦怠感、不眠
- 急性増悪時の咳・痰の増加、発熱、息切れの悪化
風邪やインフルエンザ、肺炎などの感染をきっかけに症状が急に悪化することがあり、これをCOPDの急性増悪といいます。急性増悪は回復に時間がかかることがあり、重症例では生命に関わる場合もあります。
3.検査
COPDでは、呼吸機能の評価と、他疾患の除外、合併症の確認を目的に検査を行います。
問診・診察
喫煙歴、受動喫煙の有無、職業上の粉じん・化学物質曝露、咳や痰、息切れの程度、増悪歴、併存疾患などを確認します。
呼吸機能検査(スパイロメトリー)
COPDの診断に重要な検査です。努力性肺活量と1秒量を測定し、1秒率を確認します。気管支拡張薬を吸入した後の1秒率が70%未満で、ほかの閉塞性障害をきたす疾患が除外される場合、COPDと診断されます。
胸部X線検査
重症例では肺の過膨張や透過性亢進がみられることがあります。ただし、早期COPDでは異常が分かりにくい場合があります。
胸部CT検査
肺胞の破壊による気腫性変化を確認するために有用です。早期の気腫病変や、肺がん、間質性肺炎、気胸などの合併の有無を評価することがあります。
血液検査・喀痰検査
炎症反応、感染の有無、全身状態を確認します。症状が似ている呼吸器感染症などとの鑑別にも用いられます。
動脈血ガス分析・酸素飽和度測定
血液中の酸素や二酸化炭素の状態を確認します。動作時や睡眠時に酸素が不足していないかを調べることもあります。
心電図・心エコー検査
心不全や肺高血圧症など、COPDと関連する心血管系の合併症を評価する目的で行われることがあります。
4.治療
COPDの治療は、症状、呼吸機能、増悪の頻度、合併症の有無などを総合的に評価し、段階的に行います。
禁煙
COPD治療の基本です。喫煙を続けると呼吸機能の低下が進みやすくなるため、禁煙は病気の進行を抑えるうえで重要です。必要に応じて禁煙補助薬や禁煙治療を利用します。
薬物療法
気管支を広げて空気の通りを改善する気管支拡張薬が中心です。主に長時間作用性の吸入抗コリン薬や吸入β2刺激薬が用いられます。症状や増悪の状況により、テオフィリン薬、去痰薬、鎮咳薬などが検討されることがあります。
吸入ステロイド薬
気管支喘息を合併している場合や、増悪を繰り返す場合に、気管支拡張薬と併用されることがあります。
呼吸リハビリテーション
口すぼめ呼吸、腹式呼吸などの呼吸訓練、運動療法、体位ドレナージ、栄養療法などを行います。息切れの軽減、運動能力の維持、日常生活動作の改善を目的とします。
栄養管理
痩せ過ぎは呼吸筋の低下につながり、太り過ぎは肺の動きを妨げることがあります。適切な体重維持と十分な栄養摂取が重要です。
ワクチン接種
インフルエンザや肺炎球菌感染は急性増悪の原因となるため、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されることがあります。
在宅酸素療法
低酸素血症が進行した場合、自宅や外出先で酸素を吸入する在宅酸素療法が導入されることがあります。
換気補助療法
呼吸不全が進行した場合、小型の人工呼吸器とマスクを用いて呼吸を補助する治療が検討されることがあります。
外科療法
重度の肺気腫が限局している場合などには、過膨張した肺の一部を切除する肺容量減少術が検討されることがあります。適応は呼吸機能や全身状態を踏まえて判断されます。
5.合併症
COPDは肺だけでなく、全身に影響を及ぼす疾患と考えられています。以下のような合併症に注意が必要です。
- 急性増悪
感染症などをきっかけに、咳、痰、息切れが急激に悪化する状態です。重症化すると入院治療が必要になることがあります。 - 慢性呼吸不全・低酸素血症
病状が進行すると、体に十分な酸素を取り込めなくなり、在宅酸素療法や換気補助療法が必要になることがあります。 - 呼吸器感染症
気管支炎や肺炎を合併しやすく、COPDの増悪につながることがあります。 - 肺がん
COPDの患者さんでは、喫煙歴などを背景に肺がんのリスクが高くなることが指摘されています。 - 気胸
肺胞の破壊や気腫性変化により、肺から空気が漏れて気胸を起こすことがあります。 - 間質性肺炎・肺高血圧症
COPDに関連して、間質性肺炎や肺高血圧症が問題となる場合があります。 - 心血管疾患
虚血性心疾患などの心血管疾患を合併することがあります。息切れの原因が肺だけでなく心臓に関係している場合もあります。 - 骨粗しょう症・骨格筋機能低下
全身性の炎症、栄養障害、活動量の低下などにより、骨粗しょう症や筋力低下がみられることがあります。 - 糖尿病・栄養障害
COPDでは糖尿病などの生活習慣病を合併することがあり、栄養状態の悪化も病状に影響します。 - 睡眠障害・不安・抑うつ
慢性的な息苦しさや活動制限により、睡眠障害、不安、抑うつなどがみられることがあります。
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この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。
