社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

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胸・肺

縦隔腫瘍

1.疾患の概要

縦隔腫瘍とは、左右の肺の間にある「縦隔」という空間に発生する腫瘍の総称です。縦隔には、心臓、食道、気管、気管支、大動脈・大静脈、胸腺、神経などが存在します。ただし、食道・気管・気管支・心臓・大血管そのものから発生した腫瘍は、各臓器の腫瘍として扱われ、縦隔腫瘍とは区別されることがあります。

縦隔腫瘍には良性のものと悪性のものがあり、発生する部位によってみられやすい腫瘍が異なります。上縦隔では甲状腺腫、前縦隔では胸腺腫、胸腺がん、奇形腫、胚細胞腫瘍、中縦隔では気管支嚢胞やリンパ腫、後縦隔では神経原性腫瘍などが代表的です。

多くは無症状で経過し、健康診断や他疾患の検査で胸部X線やCTを撮影した際に偶然見つかることがあります。一方、腫瘍が大きくなる、周囲臓器を圧迫する、悪性腫瘍として浸潤・転移する場合には、呼吸器症状や神経症状などが出現することがあります。診断後は、腫瘍の種類、良悪性、広がり、周囲臓器との位置関係、合併症の有無を確認したうえで治療方針を検討します。

2.原因と症状

縦隔腫瘍は単一の原因で発生する疾患ではなく、胸腺、神経、リンパ組織、胚細胞、嚢胞性病変など、発生母地によって腫瘍の種類が異なります。たとえば、胸腺から発生する胸腺腫、神経に由来する神経原性腫瘍、胚細胞由来の奇形腫や胚細胞腫瘍、リンパ性腫瘍、嚢胞性病変などが含まれます。

代表的な症状

初期には自覚症状がないことが多い一方、腫瘍が大きくなる、炎症を起こす、周囲臓器を圧迫・浸潤する場合には、以下のような症状がみられることがあります。

  • 胸の痛み、胸部圧迫感
  • 咳、痰、血痰
  • 喘鳴、呼吸困難、息苦しさ
  • 発熱、肺炎を伴う症状
  • 顔や上半身のむくみ、チアノーゼ
  • 上肢のしびれ
  • 声がかれる、むせ込み
  • しゃっくり
  • まぶたが開きにくいなどの眼症状
  • 発汗異常
  • 飲み込みにくさ、食べ物が胸につかえる感じ
  • 手足の麻痺、感覚異常
  • 悪性腫瘍の転移に伴うけいれん、麻痺、骨痛など

また、胸腺腫では重症筋無力症を合併することがあり、手足に力が入りにくい、疲れやすい、飲み込みにくい、呼吸がしにくいなどの症状がみられる場合があります。赤芽球癆、低ガンマグロブリン血症、シェーグレン症候群などが関連することもあります。

3.検査

縦隔腫瘍では、腫瘍の位置、性状、広がり、良悪性の可能性、合併症の有無を確認するため、複数の検査を組み合わせて評価します。

問診・診察

年齢、性別、症状の有無、既往歴、重症筋無力症を疑う症状、腫瘍に関連する全身症状などを確認します。

胸部X線検査

縦隔の陰影や腫瘤の有無を確認します。ただし、縦隔は他の臓器の影と重なるため、胸部X線だけでは発見や診断が難しい場合があります。

胸部CT検査

腫瘍の位置、大きさ、内部の性状、周囲臓器との関係、浸潤の有無などを詳しく評価します。縦隔腫瘍の診断や治療方針の検討で重要な検査です。

MRI検査

腫瘍と血管、神経、脊髄、周囲臓器との関係を詳しく確認する目的で行われることがあります。

血液検査・腫瘍マーカー

全身状態や臓器機能を確認します。若年男性の前縦隔腫瘍などでは、胚細胞性腫瘍の評価としてAFPやβ-HCGなどの腫瘍マーカーを測定することがあります。

重症筋無力症などの合併症評価

胸腺腫が疑われる場合、抗アセチルコリン受容体抗体、筋電図、テンシロンテストなどが検討されることがあります。

組織検査・病理検査

悪性腫瘍が疑われる場合や、治療前に腫瘍の種類を確認する必要がある場合には、腫瘍の一部を採取して顕微鏡で調べます。超音波ガイド下またはCTガイド下針生検、胸腔鏡下生検、縦隔鏡下生検、傍胸骨切開生検などが選択されることがあります。

手術による診断

縦隔は組織採取が難しい部位であり、検査だけでは良悪性や腫瘍の種類が確定しにくいことがあります。そのため、手術で切除した組織を調べて診断が確定する場合もあります。

4.治療

治療は、腫瘍の種類、良性・悪性の別、腫瘍の大きさ、周囲臓器への浸潤、転移の有無、合併症、全身状態を踏まえて選択します。

経過観察

心膜嚢胞や胸腺嚢胞など、症状がなく明らかな増大傾向がない嚢胞性病変では、定期的な画像検査で経過をみることがあります。増大や圧迫症状がある場合は治療を検討します。

手術療法

良性腫瘍や切除可能な縦隔腫瘍では、手術による切除が検討されます。胸腺腫、神経原性腫瘍、奇形腫などでは手術が治療の中心となることがあります。手術方法は腫瘍の場所、大きさ、周囲臓器への浸潤の程度により、胸骨正中切開、肋間開胸、胸腔鏡手術などから選択されます。

胸腺腫・胸腺がんに対する治療

浸潤が少ない場合は手術が検討されます。周囲臓器へ広がっている場合には、化学療法や放射線療法を組み合わせたうえで手術を検討することがあります。病期や浸潤の程度により治療方針は異なります。

化学療法

悪性リンパ腫、悪性胚細胞性腫瘍、切除困難な悪性腫瘍などでは、薬物療法が中心となることがあります。胚細胞性腫瘍では、腫瘍マーカーや組織型を踏まえて化学療法が選択されることがあります。

放射線療法

悪性腫瘍で手術が難しい場合や、手術後の補助療法として放射線療法が検討されることがあります。腫瘍の種類によって、化学療法と組み合わせて行うこともあります。

集学的治療

悪性腫瘍や進行した腫瘍では、手術、化学療法、放射線療法を組み合わせて治療を行うことがあります。治療方針は、呼吸器外科、呼吸器内科、放射線治療科、病理診断部門などで検討されることがあります。

合併疾患への治療

重症筋無力症などを合併している場合は、腫瘍の治療と並行して、免疫機能を調整する治療や症状に応じた治療が必要になることがあります。

5.合併症

縦隔腫瘍では、腫瘍そのものによる圧迫・浸潤、腫瘍の種類に特有の合併疾患、悪性腫瘍の転移などに注意が必要です。

  • 胸水貯留
    胸腔内に胸水がたまることで、息切れ、呼吸困難、胸部圧迫感が生じることがあります。胸水が繰り返し貯留する場合には、ドレナージや胸膜癒着療法が検討されます。
  • 上大静脈症候群
    腫瘍が上大静脈を圧迫することで、顔や上半身のむくみ、チアノーゼ、呼吸困難、頭痛などが起こることがあります。
  • 呼吸器症状・肺炎
    気管や気管支が圧迫されると、咳、喘鳴、呼吸困難が生じることがあります。換気が悪くなることで肺炎を起こす場合もあります。
  • 食道圧迫による嚥下障害
    食道が圧迫されると、飲み込みにくさや食べ物が胸につかえる感じが出ることがあります。
  • 神経圧迫による症状
    反回神経や横隔神経、交感神経などが影響を受けると、声がかれる、むせる、しゃっくり、呼吸困難、眼症状、発汗異常などがみられることがあります。
  • 脊髄圧迫
    後縦隔の腫瘍などで脊髄が圧迫されると、手足の麻痺や感覚異常が起こることがあります。
  • 重症筋無力症
    胸腺腫に合併することがある自己免疫疾患です。筋力低下、易疲労性、飲み込みにくさ、呼吸障害などが問題となることがあります。
  • 赤芽球癆・低ガンマグロブリン血症
    胸腺腫に関連してみられることがある合併症です。赤芽球癆では貧血症状、低ガンマグロブリン血症では感染症にかかりやすくなる可能性があります。
  • シェーグレン症候群
    目や口の乾燥などを特徴とする自己免疫疾患が関連することがあります。
  • 悪性腫瘍の転移に伴う症状
    悪性度の高い腫瘍では、脳転移によるけいれんや麻痺、骨転移による骨痛など、転移先に応じた症状が出ることがあります。

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※注釈
この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。