社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

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胸・肺

肺がん悪性胸膜中皮腫

1.疾患の概要

悪性胸膜中皮腫は、肺の外側や胸壁の内側を覆う「胸膜」の中皮細胞から発生する悪性腫瘍です。中皮腫は胸膜、腹膜、心膜、精巣鞘膜などに発生しますが、胸膜に発生するものが多くみられます。

多くはアスベスト(石綿)の吸入と関連するとされ、曝露から30〜40年程度の長い期間を経て発症することがあります。過去に建築、造船、配管、ボイラー、断熱材関連などの作業に関わった方では、職業曝露の有無を確認することが重要です。一方で、明らかなアスベスト曝露歴がない方に発症する場合もあります。

治療方針は、病気の広がり、組織型、全身状態、肺機能、合併症の有無などを踏まえて検討します。手術、薬物療法、放射線療法を組み合わせる場合もありますが、病状によっては症状緩和を重視した治療が選択されることもあります。

2.原因と症状

悪性胸膜中皮腫の主な原因として、アスベスト曝露が挙げられます。アスベストには白石綿、青石綿、茶石綿などがあり、曝露時間が長いほど発症リスクが高まるとされています。職場で吸入する職業曝露のほか、建材の解体などに伴う環境曝露が関係することもあります。

代表的な症状

症状は初期には目立たないことがあり、健診の胸部X線検査で胸水貯留や胸膜肥厚を指摘されて見つかる場合があります。進行すると、胸水の増加や胸膜病変の広がりにより、以下のような症状がみられることがあります。

  • 息切れ、呼吸困難
  • 胸部圧迫感
  • 胸の痛み
  • 上腹部痛、肩への放散痛
  • 発熱
  • 体重減少
  • 胸水貯留による胸部の違和感
  • 労作時の息苦しさ

これらの症状は他の呼吸器疾患でもみられるため、症状だけで悪性胸膜中皮腫と判断することはできません。

3.検査

悪性胸膜中皮腫が疑われる場合、画像検査、胸水検査、胸膜生検、病理検査などを組み合わせて診断します。

問診

アスベスト曝露歴、職業歴、居住環境、症状の経過、既往歴などを確認します。建築、造船、配管、ボイラー、断熱材関連などの作業歴が診断の手がかりになることがあります。

胸部X線検査

胸水貯留や胸膜肥厚の有無を確認します。健診などで片側の胸水を指摘され、精密検査につながることがあります。

胸部CT検査

胸膜の肥厚、腫瘍の広がり、胸水の状態、周囲臓器への進展を詳しく調べます。病状把握や治療方針の検討に用いられます。

PET/CT検査、MRI検査

病気の広がり、リンパ節転移、遠隔転移の有無、治療効果判定などに用いられることがあります。生検部位を検討する際に参考となる場合もあります。

胸腔穿刺・胸水検査

肋骨の間から針を刺して胸水を採取し、性状やがん細胞の有無を調べます。胸水細胞診で診断に至ることもありますが、他の悪性疾患との鑑別が難しい場合もあります。

胸膜生検

確定診断のために、胸膜や腫瘍の一部を採取して調べます。エコーやCTで確認しながら針で採取する方法、胸腔鏡や開胸により組織を採取する方法があります。

病理組織検査

採取した組織を顕微鏡で確認し、悪性胸膜中皮腫かどうかを診断します。上皮型、二相型、肉腫型などの組織型を判定し、治療方針の検討に役立てます。免疫組織化学検査を併用し、肺がんなど他の疾患との鑑別を行うことがあります。

血液検査

炎症反応や全身状態、治療前の臓器機能を確認します。血液検査のみで確定診断することは一般的ではありません。

4.治療

治療は、病期、組織型、全身状態、肺機能、年齢、合併症などを総合的に判断して選択します。呼吸器内科、呼吸器外科、放射線治療科、病理診断部門などが関わり、治療方針を検討することがあります。

手術を含む集学的治療

病変が片側の胸腔内にとどまり、全身状態や肺機能が手術に耐えられると判断される場合には、手術を含む治療が検討されます。
手術方法には、肺を温存して胸膜を切除する胸膜切除/肺剥皮術や、病状によって肺、胸膜、横隔膜、心膜などを切除する胸膜肺全摘術などがあります。手術単独ではなく、術前または術後に化学療法や放射線療法を組み合わせることがあります。

化学療法

手術が難しい場合や、二相型・肉腫型、進行例では、病気の進行を抑える目的で薬物療法が行われます。プラチナ製剤とペメトレキセドを組み合わせた治療などが用いられることがあります。治療効果や副作用を画像検査や血液検査で確認しながら継続を判断します。

免疫療法

病状や治療歴に応じて、ニボルマブ、イピリムマブなどの免疫チェックポイント阻害薬が検討されることがあります。適応は組織型、全身状態、既治療歴などを踏まえて判断されます。

放射線療法

手術や薬物療法と組み合わせて行われる場合があります。また、胸痛などの症状緩和を目的として用いられることもあります。

胸水ドレナージ・胸膜癒着療法

胸水が多く、呼吸困難や胸部圧迫感が強い場合には、胸水を排出する胸水ドレナージを行うことがあります。胸水の再貯留を抑える目的で、胸膜癒着療法が検討される場合もあります。

症状緩和を目的とした治療

息切れに対する酸素療法、痛みに対する鎮痛薬、咳止め、去痰薬、栄養管理、リハビリテーションなどを組み合わせ、生活の質を保つことを目的に治療を行うことがあります。

5.合併症

悪性胸膜中皮腫では、病気そのものの進行に伴う問題と、検査・治療に伴う負担や副作用の両方に注意が必要です。

  • 胸水貯留
    胸腔内に胸水がたまることで、息切れ、呼吸困難、胸部圧迫感が生じることがあります。胸水が繰り返し貯留する場合には、ドレナージや胸膜癒着療法が検討されます。
  • 胸痛・胸部圧迫感
    腫瘍が胸膜や胸壁、周囲組織へ広がることで、胸の痛みや圧迫感が出ることがあります。病変の位置によっては、肩や上腹部に痛みを感じることもあります。
  • 周囲臓器への浸潤
    病気が進行すると、肺、横隔膜、心膜、胸壁、縦隔などに広がることがあります。進行度によっては手術の適応や治療選択に影響します。
  • リンパ節転移・遠隔転移
    同側胸腔内のリンパ節、反対側のリンパ節、離れた臓器へ広がることがあります。転移の有無は病期や治療方針を決めるうえで重要です。
  • 呼吸機能の低下
    胸水、胸膜肥厚、腫瘍の進展、手術後の影響などにより、呼吸機能が低下することがあります。必要に応じて酸素療法やリハビリテーションを行います。
  • 手術に伴う合併症
    胸膜中皮腫の手術は体への負担が大きい治療です。術後の呼吸機能低下、感染、出血、体力低下などが問題となることがあり、手術適応は慎重に判断されます。
  • 薬物療法に伴う副作用
    化学療法では、感染症、倦怠感、食欲低下、吐き気、血液検査値の異常などが起こることがあります。免疫チェックポイント阻害薬では、免疫に関連した副作用が生じる場合があります。
  • 放射線療法に伴う副作用
    照射部位や範囲に応じて、皮膚症状、食道症状、肺への影響などが起こることがあります。治療前に目的と副作用について確認することが重要です。

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※注釈
この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。