子宮頸がん
1.疾患の概要
子宮頸がんは、子宮の入り口にあたる子宮頸部に発生するがんです。20〜30歳代の比較的若い世代でもみられることがあり、早期には自覚症状がほとんどない場合があります。
がんになる前の段階として「異形成」と呼ばれる前がん病変がみられることがあり、検診や精密検査で発見されることがあります。早期に発見された場合には、子宮頸部の一部を切除する治療により、子宮を温存できる場合があります。一方で、進行して発見された場合には、子宮や周囲組織の切除、放射線療法、薬物療法などを組み合わせた治療が検討されます。
治療方針は、病期、がんの広がり、リンパ節や遠隔臓器への転移の有無、年齢、妊娠希望の有無、全身状態などを総合的に確認して決定されます。
2.原因と症状
子宮頸がんの多くは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が関係しているとされています。HPVは主に性的接触により感染するウイルスで、多くの場合は免疫の働きにより自然に排除されますが、一部で感染が持続し、異形成を経て子宮頸がんに進行することがあります。
また、喫煙は子宮頸がんの発症リスクを高める要因の1つとされています。HPVワクチンは感染予防を目的として用いられますが、すでに生じた感染や病変を治療するものではないため、ワクチン接種後も定期的な子宮頸がん検診が重要です。
代表的な症状
- 初期には自覚症状がないことが多い
- 月経時以外の不正出血
- 性交時の出血
- おりものの増加
- 色やにおいに異常のあるおりもの
- 骨盤部の痛み
- 腰の痛み
- 足のむくみ
これらの症状は子宮頸がん以外の婦人科疾患でもみられることがあります。症状がある場合や検診で異常を指摘された場合には、婦人科での精密検査が必要です。
3.検査
子宮頸がんの検査では、がんや前がん病変の有無を確認する検査と、がんの広がりを評価する検査が行われます。
問診
症状、月経状況、妊娠・出産歴、性交時出血の有無、検診歴、既往歴などを確認します。
内診・腟鏡診
子宮や腟の状態を触診し、腟鏡を用いて子宮頸部を直接観察します。婦人科診療で基本となる検査です。
直腸診
がんが子宮周囲の組織へ広がっていないかを確認する目的で行われることがあります。
細胞診
子宮頸部をブラシや綿棒でこすり、採取した細胞を顕微鏡で調べる検査です。子宮頸がん検診でも行われます。異常がみられた場合でも、必ずしもがんとは限らず、追加の精密検査で確認します。
コルポスコピー検査・組織診
コルポスコピーという拡大鏡で子宮頸部を詳しく観察し、異常が疑われる部分から組織を採取します。組織診は、子宮頸がんや異形成の診断に重要な検査です。
円錐切除術による診断
必要に応じて、子宮頸部を円錐状に切除し、病変の広がりや深さを詳しく調べます。診断と治療を兼ねる場合があります。
経腟超音波検査
腟から超音波装置を挿入し、子宮や卵巣の状態を確認します。
画像検査
子宮頸がんと診断された場合、がんの広がりやリンパ節転移、遠隔転移の有無を調べるため、MRI、CT、PET-CTなどが行われることがあります。
血液検査
貧血や炎症の有無、全身状態を確認します。腫瘍マーカーを補助的に調べることもあります。
4.治療
子宮頸がんの治療は、異形成の程度、がんの病期、妊娠希望の有無、全身状態などを踏まえて検討されます。
経過観察
軽度から中等度の異形成では、自然に改善する場合もあるため、定期的な細胞診や組織診で経過をみることがあります。
子宮頸部円錐切除術
高度異形成、上皮内がん、ごく早期の子宮頸がんなどで検討されます。子宮頸部の一部を円錐状に切除する方法で、診断と治療を兼ねる場合があります。病理検査の結果によっては、追加治療が必要となることがあります。
子宮摘出術
がんが子宮頸部にとどまらず浸潤している場合には、子宮を摘出する手術が検討されます。病期に応じて、単純子宮全摘術、準広汎子宮全摘術、広汎子宮全摘術などが選択されることがあります。
リンパ節郭清
がんの進行度に応じて、骨盤内のリンパ節を切除し、転移の有無を確認することがあります。
妊孕性温存に関する相談
将来的な妊娠を希望する場合には、病期や病変の広がりに応じて、子宮温存の可否や卵子・胚の凍結保存などについて相談されることがあります。ただし、対象となるかどうかは病状により異なります。
放射線療法
手術が難しい場合や進行した子宮頸がんでは、放射線療法が検討されます。体の外から照射する外部照射と、子宮や腟の近くから照射する腔内照射を組み合わせることがあります。
同時化学放射線療法
放射線療法と抗がん薬治療を組み合わせて行う治療です。進行度や全身状態に応じて検討されます。
薬物療法
がんが子宮の外に広がっている場合や再発した場合などに、抗がん薬や分子標的治療薬などを用いた治療が検討されることがあります。
5.合併症
子宮頸がんでは、病気の進行や治療に伴い、以下のような合併症・影響が生じることがあります。
- 出血・貧血
病変部からの出血により、不正出血や貧血がみられることがあります。 - おりものの異常
病変部からの分泌物や感染を伴うことで、おりものの増加、色やにおいの変化がみられることがあります。 - 周囲臓器への浸潤
進行すると、腟、膀胱、直腸、尿管など周囲の臓器へ広がることがあります。 - リンパ節転移・遠隔転移
骨盤内リンパ節や、血液の流れを介して離れた臓器へ転移することがあります。 - 骨盤部痛・腰痛・足のむくみ
がんの広がりやリンパの流れへの影響により、骨盤部や腰の痛み、足のむくみが生じることがあります。 - 妊娠・出産への影響
子宮を摘出する治療を行う場合、その後の妊娠はできなくなります。放射線療法や薬物療法により卵巣機能へ影響が及ぶこともあります。 - 手術に伴う合併症
出血、感染、排尿機能や排便機能への影響、リンパ浮腫などが起こることがあります。発生しやすさは手術範囲や全身状態によって異なります。 - 放射線療法・薬物療法に伴う副作用
倦怠感、吐き気、食欲低下、下痢、皮膚症状、骨髄抑制による白血球・赤血球・血小板の減少などがみられることがあります。副作用の内容や程度は治療法により異なります。
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この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。
