社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

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社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

脳神経センター

脳血管内治療について

脳血管外科の対象疾患は脳動脈瘤、頭頚部動脈狭窄、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻です。ほとんどの脳動脈瘤は血管内治療が可能です。脳血管内治療専門医により論議し病態と希望から経過観察を含め治療法を選択しています。


脳主幹動脈狭窄に対しては、血管内治療によるステント留置術が第一選択であり、メッシュ型のステント(CASPER)が使用可能となり安全性が向上しました。血管内治療の困難な方に直達手術(頚動脈内膜剥離術、頭蓋内外動脈バイパス手術)を行っています。特に頚部血管の血行再建については、冠動脈狭窄病変、心疾患、末梢血管病変と密接にかかわる病態であり、脳血管外科と循環器内科の診療が欠かせません。

福岡和白病院は一次脳卒中コア施設として福岡エリアの脳血管疾患の拠点病院の活動をしています。2024年1月から12月の1年間に246件の脳血管内治療を施行しました(表)。最近の傾向は、急性期脳梗塞、慢性硬膜下血腫の再発例に適応が増加しています。また、本グループでは、福岡和白病院、福岡新水巻病院、新小文字病院、東京品川病院に脳血管内治療指導医の常勤医が在籍しています。2024年1月から12月の1年間に関連病院内で約800件の脳血管内治療を施行しました。

福岡和白病院 疾患別の脳血管内治療件数(2024年1月―2024年12月)

疾患名 件数
脳動脈瘤 78
脳動静脈奇形・硬膜動静脈瘻 8
頚動脈ステント 74
脳梗塞血栓回収 56
その他、脳血管拡張術 6
慢性硬膜下血腫 20
脳腫瘍 4
合計 246

脳動脈瘤の血管内塞栓術

脳動脈瘤の脳血管内治療(カテーテル治療)

脳動脈瘤は、脳血管に“こぶ”ができ、その血管壁は弱く、破裂によりくも膜下出血を起こします。薬による治療で小さくなることはありません。そのため、5㎜以上の脳動脈瘤では破裂予防の治療を検討します。治療法は血管内治療が主流です。血管内治療は右手首、あるいは大腿部の動脈から2-3ミリ径のカテーテルを脳動脈に誘導し、プラチナ製の“コイル”またはWEBというメッシュ状の塞栓デバイスで閉塞させます。大型瘤ではフローダイバーターステントを行い、脳動脈瘤への血流を遮断し破裂を回避します。標準的な瘤では治療時間2時間、入院5日間です。全身麻酔でも局所麻酔でも可能で最近は希望に応じて選択し、約80%は全身麻酔で施行しています。

脳動脈瘤コイル塞栓術の最大の魅力は「頭を切らない」で治療できることです。80%の脳動脈瘤は治療可能です。逆に部位や形状から20%の瘤は血管内治療は困難です。

治療方針

近年、ステント支援法、フローダイバーターステント、WEB留置が可能となりかつては困難であった脳動脈瘤の治療も可能となり再発率が減りました。かつては抗血小板剤の長期内服を要していましたが、ステントの材質が向上し治療から1年程度で抗血小板剤の内服が必要ない例が増え、ステントを用いる治療が増えました。

  1. 破裂率の低い3-4mm以下の小さい瘤では治療は行わず、高血圧予防と禁煙。MRI検査やCT血管造影検査で経過観察。
  2. 基本は全身麻酔で施行。希望があれば局所麻酔で施行。治療中に運動麻痺の機能の確認が必要な場合、運動誘発電位によるモニターを行う。
  3. 治療中に迷ったときは神経後遺症を出さない安全策を優先。
  4. 開頭手術で安全に治療可能な瘤は開頭手術をすすめる。

頚動脈ステント留置術

頚動脈狭窄の血管内治療(カテーテル治療)

頚動脈狭窄は、動脈硬化により頚部血管の狭窄をきたし、脳梗塞の原因となります。狭窄部にはコレステロール塊や固い成分が沈着し(プラークといいます)、剥離して脳血管に飛散します。

【頚動脈狭窄症の治療】

  1. 高血圧、脂質異常、糖尿病を治療する、禁煙する。
  2. 抗血小板剤を内服する。
  3. それでも脳梗塞の原因となる可能性が高い方には血行再建(手術による頚動脈内膜剥離術、頚動脈ステント留置術)を考慮する。脳梗塞を起こし見つかった方(症候性)は、50%以上の狭窄で血行再建を、偶然みつかった方(無症候性)は80%以上の狭窄で血行再建が推奨されます。

最近では、MRIプラークイメージ撮影により、脳梗塞の原因となりやすいプラークが判別可能で、手術適応の参考としています。
頚動脈ステント留置術の最大の魅力は局所麻酔で、頚部を切らないで治療できることです。治療時間1時間30分、入院4日間です。一方、限界もあり、特に術中に頚動脈プラークの飛散による脳梗塞の発症が最も頻度が高い合併症です。長期に確立されている頚動脈内膜剥離術には術中の脳梗塞合併症の面で劣ります。
2020年からメッシュ型ステント(CASPER)が使用可能となり術後脳梗塞の問題は飛躍的に改良しました。

治療方針

  1. 狭窄率の低い方では高血圧、脂質異常、糖尿病の改善と禁煙。頚動脈エコー検査やMRI検査で経過観察。
  2. 頚動脈内膜剥離術で比較的安全に治療可能な方は手術を優先。
  3. フィルター保護装置、バルーン保護装置を用いて、患者さんの病態に合わせた最善の血栓塞栓予防を用い、頚動脈を控えめに拡張する。
「検査で頚動脈が少し狭いから」、「楽だから」という理由での治療はすすめません。生活習慣病の予防、抗血小板療法にかかわらず脳梗塞発症の危険性が高い方を対象としています。一方で、冠動脈疾患があり抗血小板剤の中止が困難な方、心疾患、呼吸器疾患により全身麻酔が困難な方、全身麻酔が負担となる高齢者にも治療可能であり、病態に応じて適切にアドバイスできますのでご相談ください。