食道がん
1.疾患の概要
食道がんは、口から胃へ飲食物を送る管状の臓器である食道の粘膜から発生する悪性腫瘍です。食道は成人で約25cmの長さがあり、首から胸部、腹部にかけて走行しています。日本では、食道の粘膜を構成する扁平上皮から発生する「扁平上皮がん」が多いとされています。
食道の周囲には、気管、肺、心臓、大動脈などの重要な臓器があります。また、食道の壁は比較的薄く、血管やリンパ管も豊富なため、進行すると周囲臓器への浸潤やリンパ節・他臓器への転移を起こすことがあります。
早期では自覚症状が乏しいことが多く、内視鏡検査などで発見される場合があります。治療方針は、がんの深さ、リンパ節転移や遠隔転移の有無、発生部位、全身状態などを総合して決定されます。
2.原因と症状
食道がんの主なリスク因子として、飲酒と喫煙が挙げられます。飲酒と喫煙の両方の習慣がある場合、リスクが高まることが報告されています。また、飲酒で顔が赤くなりやすい方は、アルコール代謝に関係する体質により注意が必要とされています。そのほか、熱い飲食物、刺激の強い食事、逆流性食道炎などによる慢性的な粘膜刺激も関係すると考えられています。
代表的な症状
- 早期では自覚症状がない
- 飲食時の胸の違和感
- 胸がしみる感じ、チクチクする感じ
- のどの違和感
- 食べ物がつかえる感じ
- 飲み込みにくさ
- 食事量の減少
- 体重減少
- 胸の痛み
- 背中の痛み
- 咳が続く
- 血の混じった痰
- 声のかすれ
- 吐いたものに血が混じる
- 肺、肝臓、骨などへの転移に伴う呼吸困難、黄疸、むくみ、腹水、骨の痛み、骨折など
症状がある場合でも、ほかの疾患と区別が難しいことがあります。また、早期では症状がないことが多いため、リスク因子がある方では内視鏡検査などによる確認が重要です。
3.検査
食道がんが疑われる場合は、がんの有無を確認する検査と、進行度を調べる検査を組み合わせて行います。
上部消化管内視鏡検査
食道内を直接観察する検査です。食道がんが疑われる場合に重要な検査で、病変の位置、大きさ、広がりなどを確認します。必要に応じて、ルゴール染色や特殊光観察を併用し、微細な粘膜変化を確認することがあります。
病理検査
内視鏡検査中に病変の一部を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無や組織型を確認します。食道がんの確定診断に必要な検査です。
超音波内視鏡検査
内視鏡に超音波装置を備えた検査で、がんの深さや周囲リンパ節の状態を評価する目的で行われることがあります。
上部消化管造影検査
造影剤を飲んでX線撮影を行い、食道の狭窄の程度や飲食物の通過状態を確認します。
CT検査
リンパ節転移、肺・肝臓など他臓器への転移、周囲臓器への浸潤の有無を調べます。治療方針を決めるうえで重要な検査です。
MRI検査
必要に応じて、がんの広がりや周囲組織との関係を評価する目的で行われることがあります。
PET検査
CT検査などを補助し、微小な転移や再発の評価を目的として行われることがあります。
血液検査・腫瘍マーカー
貧血、炎症、肝機能、腎機能など全身状態を確認します。SCC、CEA、p53抗体などが参考にされることがありますが、腫瘍マーカーだけで診断は確定できません。
重複がんの評価
食道がんでは、咽頭・喉頭がん、胃がん、大腸がんなどを合併することがあるため、必要に応じて追加検査が行われます。
4.治療
治療は、病期、がんの深さ、転移の有無、全身状態、患者さんの希望などを踏まえて選択されます。内視鏡治療、手術、放射線治療、薬物療法を単独または組み合わせて行います。
内視鏡治療
がんが粘膜表面にとどまり、リンパ節転移や遠隔転移の可能性が低いと判断される場合に検討されます。内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。
手術療法
食道を切除し、周囲のリンパ節を郭清し、胃などを用いて食べ物の通り道を再建する治療です。がんの部位や進行度、全身状態に応じて手術範囲が決定されます。
薬物療法
抗がん剤を用いて全身に作用させる治療です。手術前にがんを小さくする目的で行われることや、進行・転移例で行われることがあります。近年では、病状に応じて免疫チェックポイント阻害薬が用いられる場合もあります。
放射線治療
がんに放射線を照射する治療です。手術が難しい場合や、症状緩和を目的とする場合などに検討されます。
化学放射線療法
放射線治療と薬物療法を組み合わせる治療です。手術以外の治療選択肢として、病状や全身状態に応じて検討されます。
食道ステント留置
進行により食道が狭くなり、飲食物が通りにくい場合に、食道内にステントを留置して通過性の改善を図ることがあります。
緩和的治療
進行した食道がんでは、痛み、嚥下困難、栄養状態、呼吸症状などに対する治療を組み合わせ、生活の質を保つことを目的とした治療が行われることがあります。
5.合併症
食道がんでは、病気の進行による合併症と、治療に伴う副作用・合併症があります。
- 食道狭窄
がんが大きくなることで食道が狭くなり、食べ物が通りにくくなることがあります。 - 栄養障害・体重減少
嚥下困難や食事量の低下により、体重減少や栄養状態の悪化が起こることがあります。 - 周囲臓器への浸潤
気管、気管支、肺、大動脈などへがんが広がることがあります。咳、血痰、胸痛、背部痛などの症状を伴う場合があります。 - 声のかすれ
リンパ節転移などにより声帯を動かす神経に影響が及ぶと、嗄声が生じることがあります。 - 遠隔転移
肺、肝臓、骨などに転移することがあります。転移部位により、呼吸困難、黄疸、腹水、骨痛、骨折などが起こる場合があります。 - 出血
がんからの出血により、吐血や血液が混じった嘔吐がみられることがあります。 - 手術に伴う合併症
吻合部狭窄、消化機能の低下、食べ物のつかえ感、腸閉塞などが起こることがあります。 - 内視鏡治療に伴う合併症
出血、穿孔、治療後の食道狭窄などが起こることがあります。切除範囲が広い場合は、狭窄予防や拡張処置が必要になることがあります。 - 化学療法に伴う副作用
脱毛、口内炎、下痢、食欲低下、白血球減少、血小板減少、腎機能障害などが起こることがあります。 - 放射線治療に伴う副作用
皮膚炎、食道炎、肺炎、心臓への影響などが起こることがあります。治療後しばらく経ってから晩期合併症が生じる場合もあります。 - 再発
治療後に、食道、リンパ節、他臓器などに再発することがあります。治療後も定期的な検査による経過観察が必要です。
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この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。
