社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

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頸部

頸動脈狭窄症

1.疾患の概要

頸動脈狭窄症とは、首の左右を通り脳へ血液を送る「頸動脈」が、動脈硬化などによって狭くなる病気です。特に、総頸動脈が内頸動脈と外頸動脈に分かれる部分にプラークがたまりやすく、内頸動脈の狭窄が脳梗塞の原因になることがあります。
頸動脈狭窄症は、症状がないまま健康診断や頸動脈エコー、MRI・MRAなどで見つかることがあります。一方で、狭くなった部分にできた血栓やプラークの一部が脳の血管へ流れると、一過性脳虚血発作や脳梗塞を起こす場合があります。
治療方針は、狭窄の程度、症状の有無、プラークの性状、脳血流の状態、年齢、持病、内服薬などを総合的に評価して決定します。すべての方に手術やステント治療が必要になるわけではなく、薬物療法と生活習慣の管理で経過をみる場合もあります。

2.原因と症状

頸動脈狭窄症の主な原因は動脈硬化です。血管の内側にコレステロールなどが蓄積してプラークを形成し、血管の内腔が狭くなります。プラークが不安定な場合、表面に血栓ができたり、プラークの一部がはがれて脳の血管に詰まったりすることがあります。
発症や進行に関係する主な要因には以下があります。
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 喫煙
  • 肥満
  • 慢性腎臓病
  • 心疾患
  • 加齢
  • 脳梗塞や一過性脳虚血発作の既往
  • 動脈硬化性疾患の家族歴
  • 運動不足、食生活の乱れ
頸動脈狭窄症は無症状のこともあります。症状が出る場合は、脳の血流が一時的に不足する一過性脳虚血発作や、脳梗塞として現れます。
主な症状には以下があります。
  • 片側の手足に力が入らない
  • 片側の手足や顔がしびれる
  • ろれつが回らない
  • 言葉が出にくい、相手の話が理解しにくい
  • 片目が一時的に見えにくくなる
  • 視野の一部が欠ける
  • ふらつく、歩きにくい
  • 顔の片側がゆがむ
  • 意識がぼんやりする
これらの症状が短時間で改善した場合でも、脳梗塞の前ぶれである可能性があります。突然の麻痺、言語障害、視覚障害がある場合は、症状が軽くても速やかな救急受診が必要です。

3.検査

頸動脈狭窄症の検査では、狭窄の程度、プラークの性状、脳血流への影響、脳梗塞の有無を評価します。治療方針を決めるためには、複数の検査を組み合わせて判断します。
主な検査には以下があります。

頸動脈超音波検査

首に超音波を当て、頸動脈の狭窄の程度、血流速度、プラークの大きさや性状を調べます。体への負担が少なく、経過観察にも用いられます。

頭部MRI・MRA検査

脳梗塞の有無や、脳内・頸部血管の狭窄、閉塞を確認します。無症候性の小さな脳梗塞が見つかることもあります。

CT・CT血管撮影検査:CTA

造影剤を用いて血管の形を評価します。狭窄部位、石灰化、血管の走行、周囲構造との関係を確認する目的で行われます。

脳血管造影検査

カテーテルを用いて血管を詳しく調べる検査です。狭窄の程度や血流の状態を詳細に評価でき、ステント治療を検討する際にも重要です。

脳血流検査

SPECT、PET、CT灌流画像、MRI灌流画像などにより、脳に十分な血液が届いているかを評価します。血流予備能を確認する目的で行われることがあります。

血液検査

脂質、血糖、腎機能、肝機能、貧血、凝固機能などを確認します。薬物療法や造影剤を使用する検査・治療の安全性評価にも関係します。

心電図・心臓超音波検査

心房細動や心臓内血栓など、脳梗塞の別の原因がないかを確認します。

頸部血管雑音の確認

診察で首の血管雑音が聞こえることがあり、頸動脈狭窄を疑うきっかけになる場合があります。
検査結果だけで治療方針が決まるわけではありません。症状の有無、発症時期、狭窄率、プラークの不安定性、全身状態を踏まえて総合的に判断します。

4.治療

頸動脈狭窄症の治療は、脳梗塞の予防を目的に行います。治療には、生活習慣の改善、薬物療法、外科的治療、血管内治療があります。

生活習慣の改善

禁煙、血圧管理、血糖管理、脂質管理、体重管理、適度な運動、食事内容の見直しなどを行います。動脈硬化の進行を抑えるため、継続的な管理が重要です。

薬物療法

血栓をできにくくする抗血小板薬、脂質を下げる薬、血圧や糖尿病を管理する薬などを使用します。無症状の狭窄や軽度から中等度の狭窄では、薬物療法を中心に経過観察することがあります。

頸動脈内膜剥離術:CEA

首を切開し、頸動脈を直接開いてプラークを取り除く手術です。症状のある高度狭窄や、脳梗塞リスクが高いと判断される場合に検討されます。全身状態、狭窄部位、血管の形、合併症リスクを踏まえて適応を判断します。

頸動脈ステント留置術:CAS

足の付け根や腕の血管などからカテーテルを挿入し、狭くなった頸動脈にステントを留置して血管を広げる治療です。治療中に血栓やプラークが脳へ流れないよう、塞栓予防の器具を使用することがあります。外科手術のリスクが高い場合や、病変の位置などによりCEAが難しい場合に検討されることがあります。

急性期脳梗塞への対応

頸動脈狭窄が原因で脳梗塞を発症した場合は、発症からの時間や画像所見に応じて、血栓溶解療法、血栓回収療法、抗血栓療法などが検討されます。
治療法の選択は、症状の有無、狭窄の程度、プラークの状態、年齢、心臓や腎臓の機能、服薬状況などにより異なります。治療により脳梗塞リスクを下げることを目的としますが、手術やステント治療にも合併症の可能性があるため、利点とリスクを確認したうえで方針を決めることが重要です。

5.合併症

頸動脈狭窄症で最も注意が必要な合併症は、脳梗塞です。プラークや血栓が脳の血管に詰まる、または狭窄により脳血流が不足することで発症します。
主な合併症には以下があります。
  • 一過性脳虚血発作
    麻痺、しびれ、言語障害、片目の見えにくさなどが一時的に出現します。症状が消えても、脳梗塞の前兆となる場合があります。
  • 脳梗塞
    脳の血管が詰まり、麻痺、言語障害、嚥下障害、認知機能低下などの後遺症が残ることがあります。
  • 網膜虚血・一過性黒内障
    頸動脈由来の血栓が眼の血管に流れ、片目が一時的に見えにくくなることがあります。
  • 認知機能への影響
    脳血流の低下や小さな脳梗塞の反復により、記憶力や注意力に影響する場合があります。
  • 再発
    脳梗塞や一過性脳虚血発作を起こした方では、再発予防のための継続的な治療が重要です
治療に関連する合併症としては、CEAでは脳梗塞、出血、創部血腫、感染、頸部神経障害、心筋梗塞などが起こる可能性があります。CASでは、脳梗塞、血管損傷、穿刺部出血、ステント内再狭窄、造影剤による腎機能障害やアレルギーなどが問題になることがあります。
また、CEA・CASいずれでも、治療後に脳血流が急に増えることで頭痛、けいれん、脳出血などを起こす「過灌流症候群」に注意が必要です。合併症のリスクは、狭窄の状態、治療方法、年齢、持病によって異なります。

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※注釈
この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。