社会医療法人財団 池友会 福岡和白病院
Fukuoka Wajiro Hospital

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肝臓・胆嚢・膵臓

膵臓がん(膵がん)

1.疾患の概要

膵臓がんは、胃の背中側に位置する膵臓に発生する悪性腫瘍です。膵臓には、消化液である膵液を分泌する外分泌機能と、血糖値を調節するインスリンなどを分泌する内分泌機能があります。一般的に「膵臓がん」と呼ばれるものの多くは、膵液の通り道である膵管の細胞から発生する膵管がんです。

膵臓は腹部の深い場所にあり、周囲には胆管、十二指腸、重要な血管などが存在します。そのため、早期には自覚症状が現れにくく、診断時には周囲の組織や血管への広がり、リンパ節転移、肝臓・肺などへの転移、腹膜播種を伴っていることがあります。

治療方針は、がんの部位、進行度、転移の有無、血管との位置関係、年齢、全身状態などを総合的に評価して検討されます。膵臓がんでは、画像検査により「切除可能」「切除可能境界」「切除不能」に分類し、それぞれの状態に応じて手術、薬物療法、放射線療法、緩和ケアなどを組み合わせることが一般的です。

2.原因と症状

膵臓がんの明確な発症メカニズムは、現時点では十分に解明されていません。一方で、発症リスクに関係するとされる要因はいくつか知られています。

主なリスク因子

  • 膵臓がんの家族歴
  • 遺伝性膵炎、家族性大腸ポリポーシスなどの遺伝性疾患
  • 糖尿病、特に中高年で新たに発症した糖尿病や急な血糖コントロール悪化
  • 慢性膵炎
  • 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)などの膵嚢胞性疾患
  • 喫煙
  • 肥満
  • 大量飲酒

代表的な症状

膵臓がんは早期には症状が乏しいことが多く、症状があっても胃腸の不調や腰痛などと区別しにくい場合があります。症状が長引く場合や、糖尿病の急な発症・悪化がみられる場合には、精密検査が検討されます。
主な症状は以下のとおりです。

  • 腹痛、みぞおちの痛み
  • 腰や背中の痛み
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • お腹の張り
  • 黄疸
  • 皮膚のかゆみ
  • 灰白色便、褐色尿
  • 吐き気、消化不良感
  • 急性膵炎に伴う発熱や強い上腹部痛
  • 糖尿病の新規発症、または急な悪化
  • 嗜好の変化

膵頭部にがんが発生した場合は、胆管が圧迫・閉塞されることで黄疸が比較的早く現れることがあります。一方、膵体部・膵尾部のがんでは症状が出にくく、進行してから見つかることがあります。

3.検査

膵臓がんの検査では、がんの有無を確認する検査と、治療方針を決めるために進行度を評価する検査が行われます。

血液検査

膵酵素、肝胆道系酵素、血糖値などを確認します。CEA、CA19-9などの腫瘍マーカーを調べることもあります。ただし、腫瘍マーカーのみで膵臓がんを確定することはできず、画像検査や病理検査と組み合わせて判断されます。

腹部超音波検査

体外から超音波を当て、膵管の拡張、膵嚢胞、腫瘤の有無などを確認します。体への負担が少ない検査ですが、膵臓は腹部の深い位置にあるため、観察しにくい場合があります。

造影CT検査

膵臓の腫瘍の位置や大きさ、周囲血管との関係、リンパ節転移、肝臓などへの転移の有無を評価します。切除可能かどうかを判断するうえで重要な検査です。

MRI検査・MRCP

膵管や胆管の状態、腫瘍の広がり、嚢胞性病変などを詳しく確認するために行われます。

超音波内視鏡検査(EUS)

内視鏡の先端についた超音波装置で、胃や十二指腸の内側から膵臓を観察します。小さな病変や膵臓内部の状態を確認する目的で行われます。必要に応じて、組織や細胞を採取する検査が検討されることがあります。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)

内視鏡を用いて膵管や胆管に造影剤を注入し、狭窄や閉塞の有無を調べます。必要に応じて細胞診・組織診を行うことがあります。閉塞性黄疸や胆管炎がある場合には、胆道ステント留置などの処置が行われることがあります。

病理検査・細胞診

採取した組織や細胞を顕微鏡で調べ、がん細胞の有無を確認します。治療方針を決定するうえで重要な検査です。

PET検査

必要に応じて、遠隔転移や再発の評価などを目的に行われることがあります。

審査腹腔鏡

画像検査だけでは分かりにくい腹膜播種の有無を確認するため、全身麻酔下で腹腔内を観察することがあります。

4.治療

膵臓がんの治療は、切除可能性、転移の有無、全身状態などに応じて検討されます。診断後は、手術、薬物療法、放射線療法、症状緩和のための治療を組み合わせることがあります。

手術療法

がんが切除可能と判断される場合に検討されます。がんの部位により、主に以下の手術が行われます。

  • 膵頭十二指腸切除術
    膵頭部のがんに対して、膵頭部、十二指腸、胆管、胆嚢などを切除する手術
  • 膵体尾部切除術
    膵体部・膵尾部のがんに対して、膵臓の体部・尾部を切除する手術
  • 必要に応じた周囲臓器や血管の合併切除

術前治療

切除可能境界と判断される場合や、再発リスクを考慮する場合には、手術前に抗がん薬治療や化学放射線療法を行い、病状を再評価したうえで手術を検討することがあります。

術後補助化学療法

手術後の再発リスクを下げる目的で、一定期間の抗がん薬治療が行われることがあります。治療内容は、病理検査の結果や全身状態を踏まえて検討されます。

薬物療法

切除不能膵臓がん、転移を伴う膵臓がん、再発膵臓がんでは、抗がん薬による治療が中心となることがあります。ゲムシタビン、S-1、FOLFIRINOX療法、ゲムシタビンとナブパクリタキセルの併用療法などが、患者さんの状態に応じて検討されます。副作用や体力面を確認しながら治療方針が調整されます。

放射線療法・化学放射線療法

がんが局所にとどまっているものの手術が難しい場合などに、放射線療法や抗がん薬を併用した化学放射線療法が検討されることがあります。遠隔転移がある場合には、全身治療である薬物療法が中心となることが一般的です。

黄疸や胆管閉塞に対する治療

胆管が閉塞して黄疸や胆管炎を起こしている場合には、胆道ステント留置やドレナージ治療が行われることがあります。

糖尿病に対する治療

膵臓の機能低下により糖尿病が発症・悪化する場合があります。必要に応じて、食事療法、内服薬、インスリン療法などが検討されます。

緩和ケア・支持療法

痛み、食欲低下、体重減少、吐き気、倦怠感などの症状を和らげ、治療や生活を支えるために行われます。病状にかかわらず、必要に応じて早い段階から併用されることがあります。

5.合併症

膵臓がんでは、病気の進行や治療に伴い、さまざまな合併症・症状が生じることがあります。

  • 閉塞性黄疸
    膵頭部のがんなどにより胆管が圧迫・閉塞されると、皮膚や白目が黄色くなる、尿が濃くなる、便が白っぽくなる、皮膚のかゆみが出ることがあります。
  • 胆管炎
    胆汁の流れが悪くなることで感染を起こし、発熱、腹痛、黄疸などがみられることがあります。状態に応じて抗菌薬治療や胆道ドレナージが検討されます。
  • 急性膵炎
    膵管の閉塞などにより膵炎を起こし、強い上腹部痛や発熱を伴うことがあります。
  • 糖尿病の発症・悪化
    膵臓の内分泌機能が低下すると、血糖コントロールが悪化することがあります。
  • 栄養状態の低下
    食欲不振、消化吸収機能の低下、体重減少などにより、体力や栄養状態が低下することがあります。
  • 疼痛
    がんが周囲の神経へ影響することで、腹部痛や背部痛が強くなることがあります。鎮痛薬や神経ブロックなどが検討される場合があります。
  • リンパ節転移・遠隔転移
    リンパ節、肝臓、肺などへ転移することがあります。転移の有無は治療方針に関わります。
  • 腹膜播種
    がん細胞がお腹の中に広がり、腹水や腹部膨満などを引き起こすことがあります。
  • 手術に伴う合併症
    出血、感染、縫合不全、膵液漏、胃内容排出遅延、消化吸収機能の変化、血糖調節の変化などが起こることがあります。
  • 薬物療法・放射線療法に伴う副作用
    吐き気、食欲低下、下痢、倦怠感、白血球や血小板の減少、しびれ、皮膚症状などがみられることがあります。副作用の程度には個人差があり、治療内容や全身状態に応じて対応が検討されます。

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※注釈
この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。