乳がん
1.疾患の概要
乳がんは、乳腺組織に発生する悪性腫瘍です。乳腺は、乳汁をつくる小葉と、乳汁の通り道である乳管などから構成されており、乳がんの多くは乳管から発生します。まれに男性に発症することもあります。
乳がんの治療方針は、がんの大きさや広がり、リンパ節転移や遠隔転移の有無、ホルモン受容体やHER2などのがん細胞の性質、年齢、全身状態、患者さんの希望などを総合して決定されます。手術、放射線療法、薬物療法を組み合わせることが一般的で、診断後は病期やサブタイプを確認したうえで治療計画を立てることが重要です。
2.原因と症状
乳がんの明確な原因は全て解明されているわけではありませんが、女性ホルモンであるエストロゲンの影響、遺伝的要因、生活習慣などが発症に関係すると考えられています。
代表的なリスク要因
- 初経年齢が早い、閉経年齢が遅い
- 出産経験がない、初産年齢が高い
- 授乳経験がない
- 閉経後の肥満
- 過度の飲酒、喫煙、運動不足
- 脂質の多い食事など生活習慣の影響
- 近い血縁者に乳がんや卵巣がんの方がいる
- BRCA1、BRCA2などの遺伝子変異が関係する遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)
- 過去に乳がんにかかったことがある
代表的な症状
- 乳房のしこり
- 乳房の変形
- 乳房の皮膚のくぼみ、ひきつれ
- 乳頭の陥没
- 乳頭からの血液が混じった分泌物
- 乳房の皮膚のただれ、赤み、痛み
- わきの下のリンパ節の腫れ、しこり
- 腕のむくみ、しびれ
- 自覚症状がない状態で検査により発見される場合
乳房のしこりや痛みがある場合でも、全てが乳がんとは限りません。一方で、症状が目立たない乳がんもあるため、画像検査や組織検査による確認が必要です。
3.検査
乳がんが疑われる場合や診断後の治療方針を決める際には、以下の検査を組み合わせて行います。
問診・視診・触診
症状、発症時期、月経・出産・授乳歴、家族歴、既往歴などを確認し、乳房やわきの下のリンパ節の状態を診察します。
マンモグラフィ
乳房を圧迫してX線撮影を行う検査です。小さなしこりや、乳がんに関連することがある微細な石灰化の確認に用いられます。検査時に圧迫による痛みを伴うことがあります。
乳房超音波検査(エコー検査)
超音波を用いて乳房内のしこりの有無、大きさ、形、周囲のリンパ節の状態などを確認します。年齢や乳腺の状態にかかわらず腫瘤の評価に用いられることがあります。
細胞診・組織診
乳がんの診断を確定するために、病変部から細胞や組織を採取して顕微鏡で調べます。針生検、吸引針生検、ステレオガイド下生検、切除生検などが病変の状態に応じて選択されます。
病理検査・サブタイプ評価
採取した組織を調べ、がんの種類や性質を確認します。エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2などを調べることで、薬物療法の選択に役立てます。
MRI検査
乳房内でのがんの広がりや乳管内進展などを詳しく調べる目的で行われることがあります。造影剤を使用する場合があり、腎機能やアレルギーなどを確認して実施を判断します。
CT検査
乳房周囲や肺、肝臓などへの広がりを確認する目的で行われることがあります。
骨シンチグラフィなどの骨転移評価
骨への転移が疑われる場合や病期評価のために行われることがあります。
血液検査・腫瘍マーカー
全身状態の確認や治療経過の参考として行われることがあります。腫瘍マーカーは早期乳がんでは上昇しないこともあり、単独で診断を確定する検査ではありません。
遺伝性乳がんに関する評価
若年発症、両側乳がん、家族歴などから遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)が疑われる場合には、必要に応じて専門的な評価が検討されます。
4.治療
乳がんの治療は、病期、がんの性質、全身状態、患者さんの希望を踏まえて選択されます。手術、放射線療法、薬物療法を単独または組み合わせて行うことが一般的です。
手術療法
乳房内のがんを切除する治療です。がんの広がりが限定的な場合には乳房部分切除術(乳房温存術)が選択されることがあります。がんが広範囲に及ぶ場合や複数の病変がある場合には、乳房全体を切除する乳房切除術が検討されます。
手術療法
遠隔転移がなく、内視鏡治療の対象とならない場合には、胃の一部または全部を切除し、周囲のリンパ節を取り除く手術が検討されます。がんの位置や進行度により、幽門側胃切除術、噴門側胃切除術、胃全摘術、幽門保存胃切除術などが選択されることがあります。
手術方法には、開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術などがあり、患者さんの状態やがんの状況、施設の体制を踏まえて検討されます。
センチネルリンパ節生検・腋窩リンパ節郭清
わきの下のリンパ節への転移の有無を確認するため、センチネルリンパ節生検が行われることがあります。転移の状況に応じて、腋窩リンパ節郭清が検討されます。
乳房再建
乳房切除後に、インプラントや自家組織を用いて乳房の形を再建する方法です。乳がん手術と同時に行う場合と、後日行う場合があります。病状や放射線治療の予定などを踏まえて判断されます。
放射線療法
乳房温存術後の局所再発リスクを下げる目的で行われることがあります。また、手術後の補助療法、手術を行わない場合の治療、骨転移などによる痛みの緩和を目的として行われることもあります。
薬物療法
がんの性質や進行度に応じて、手術前、手術後、再発・転移時などに行われます。全身に作用する治療であり、再発予防や進行抑制を目的として選択されます。
ホルモン療法(内分泌療法)
エストロゲン受容体などが陽性の乳がんに対して、女性ホルモンの作用を抑える目的で行われます。タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬などが用いられることがあります。
化学療法(抗がん薬)
がん細胞の増殖を抑える目的で行われます。再発リスク、がんの進行度、サブタイプなどを踏まえて、手術前または手術後、再発・転移時に検討されます。
分子標的療法・抗HER2療法
HER2陽性乳がんなど、特定の性質を持つ乳がんに対して検討されます。病理検査の結果をもとに、適応が判断されます。
免疫チェックポイント阻害薬
一部のトリプルネガティブ乳がんなどで、病状や条件に応じて使用が検討されることがあります。
ラジオ波焼灼療法
腫瘍径などの条件を満たす一部の限局性早期乳がんで、選択肢となることがあります。適応は画像検査や病理検査の結果を踏まえて判断されます。
遺伝性乳がんに関連する治療選択
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)と診断され、条件を満たす場合には、対側乳房や卵巣・卵管に対するリスク低減手術が検討されることがあります。
5.合併症
乳がんでは、病気の進行に伴う合併症と、検査・治療に伴う合併症や副作用があります。
- リンパ節転移
乳がんは、わきの下の腋窩リンパ節に転移することがあります。リンパ節が腫れたり、しこりとして触れたりする場合があります。 - 腕のむくみ・しびれ
リンパ節転移やリンパ節郭清後のリンパ流の変化により、腕のむくみやしびれが生じることがあります。 - 遠隔転移
乳がんが血液やリンパの流れに乗って、骨、肺、肝臓、脳などに転移することがあります。転移部位により痛み、呼吸症状、肝機能異常、神経症状などがみられる場合があります。 - 局所再発・遠隔再発
治療後に乳房や胸壁、リンパ節、離れた臓器に再発することがあります。再発リスクは病期やがんの性質により異なります。 - 生検に伴う出血
針生検や吸引針生検などの組織検査後に、出血や皮下出血が起こることがあります。 - 手術に伴う合併症
創部の痛み、出血、感染、リンパ液の貯留、肩や腕の違和感などが起こることがあります。リンパ節郭清を行った場合は、腕のむくみなどに注意が必要です。 - 放射線療法に伴う副作用
照射部位の皮膚炎、日焼けのような変化、だるさなどがみられることがあります。一部で放射線性肺炎が起こる場合があります。 - 化学療法に伴う副作用
薬剤により異なりますが、脱毛、白血球減少、吐き気、食欲不振、倦怠感などが起こることがあります。 - ホルモン療法・分子標的療法などに伴う副作用
使用する薬剤により副作用は異なります。治療前に期待される効果、起こりうる副作用、治療期間について確認することが重要です。
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この記事は、一般的な疾患情報をまとめたものです。治療方法や検査内容は医療機関によって異なる場合があります。ご自身の症状や治療についてのご相談は、診察時に医師にお尋ねください。
